中国政府は、人民元を国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)に採用させるため、様々な策を取っている。経済力や軍事力で、米国と肩を並べようとしている中国の思惑がある。米経済学者ジョン・メイソン氏は、最近の中国金融政策と通貨の動向を読み解いた。
メイスン氏は11月8日、米金融メディアのザ・ストリートで、「中国当局は人民元をSDRに採用させるため積極的な動きを見せている」「現在、あらゆる手を尽くしている」と指摘した。
まず、中国の中央銀行である中国人民銀行は、人民元の兌換範囲を0.54%に拡大。これは2005年に人民元が固定為替相場を放棄して以来、最大の許可変動範囲だ。
8月11日には、人民元売買の基準となる対ドルの為替レートである「基準値」の算出方法を変更すると発表した。より市場の実態を反映させ、人民元の国際的な信頼を高めるのが狙いと見られている。
10月29日、人民元の対ドル為替レートは6.1375:1と過去10年で最大の上げ幅を記録。現在は6.36:1に落ち着いている。今回の人民元の暴騰原因について、専門家の意見は様々だが、市場が人民元への見方を変えたわけではないと話している。
中国政府は同日、海外投資家がより簡単に中国の資本市場に参入できるよう、金融開放革新の推進を発表。上海自由貿易区の規則緩和を宣言した。
これら全ては10月に開催された、中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議後の事だ。会議の主要テーマは今後5年間の経済成長計画。人民元をSDRに採用させることで、中国経済の門戸を広げ、将来のための基盤を作ろうと考えている。
中国は、米国の経済、政治、軍事力に肩を並べようとしている。メイソン氏は、SDR採用までの努力など、最近の中国習近平政権の動向から、「米国は、すぐにこの挑戦を受けないかもしれないが、中国が目的達成にまい進していることは明確だ」と指摘した。
ロイター通信などによると、IMFのラガルド専務理事は、ドルと円、ユーロ、英ポンドで構成されるSDRに、人民元を加えることを支持している。IMFは11月30日の理事会で、採用を承認するとみられる。
(翻訳編集・山本アキ)