民泊仲介サービス世界最大手エアビーアンドビー(Airbnb、米サンフランシスコ本社)は、「中国の規制を遵守する」として、3月30日から住居提供者(ホスト)情報を中国当局と提供すると発表した。
「通知することなく、エアビー中国は、ホストの情報を中国当局に提供する場合がある」とエアビー中国支社はホストにあてたメッセージに記した。また、こうした情報開示は「中国で事業を行っている他のサービス業者の扱いと同様」と弁明し、懸念があればホストを辞めることができるとした。
中国では、市民および外国人の居住に関する厳しい規制により、訪中客は入国から24時間以内に警察に住所を登録申請する必要がある。届け出なかったり遅延した場合は、罰金を課されることもある。
重要会議が開かれる北京中枢では、人権派の市民や外国人の活動が厳しく監視されている。エアビーは3月30日まで、北京での民泊仲介サービスを停止した。同社は「環境要因のため」と説明しているが、3月5日から20日までの全国人民代表大会(全人代)の開催と関連していると考えられている。昨年10月に行われた5年に1度の党大会でも同様に、エアビーは1カ月、北京での同サービスを停止した。
「エアビー中国は、プライバシーと情報開示に関する法律を含む、地域の法律や規制を遵守しなければならない」と同社は続けた。エアビー広報担当は、どのような情報の提供が行われるのかについては明言を避けた。
2016年、エアビーは「中国の法律を遵守する」として、中国合弁会社を設立。保存された利用客データは当局側に提供されるのではないかとの懸念を引き起こした。
中国共産党政府は2017年6月、ネットの情報統制と検閲を強化する「インターネット安全法」を施行した。これにより、海外のIT企業は、データを中国に保管し、当局がその企業データにアクセスできるよう技術サポートを施すよう要求されている。
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海外企業が中国でのデータ管理をすることで、トラブルはすでに起きている。米アップルは2月28日、データ共有サービスiCould(アイクラウド)を、中国での運営を貴州省政府傘下の企業「雲上貴州」に移管した。その後、ただちにパスワード書き換えや、情報漏えいをほのめかす脅迫など、問題が発生したとの書き込みが中国ネットで相次いだ。
メディア監視を行うNGO団体「国境なき記者団」は、中国駐在のジャーナリストや記者たちに対して、「身の危険に及びかねない」としてiCould中国の使用停止を呼びかけた。
(編集・佐渡道世)
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