【大紀元日本8月25日】中国の国家プロジェクト「三峡ダム」。地すべりや崖崩れの危険性から、年末までに2回目で2万人規模の集団移住を完了させるとの通達が出されている。
三峡ダムは湖北省中部の長江流域に建設された、面積1045平方キロの巨大ダムであり、先月に全面稼動となった。17年間の建設期間中、周辺地域の計130万人が立ち退きを命じられた。
洪水抑制、電力供給、水運改善を主な目的としている同ダムだが、移住者の多くはその恵みを得られず、充分な政府補償も受けられないまま貧困化している。
今回の2万人移住の対象者は黄土坡地区の住民で、みな同ダム建設による二回目の立ち退きとなるが、あまり反発していない様子だという。
そのうちの1人、1998年に一回目の移住で現地に移ってきたという57歳の女性帥さんはドイツ国営ラジオ局ドイチェ・ベレの取材に応じ、「政府が移動しなさいと言うなら、移動するしかない。反抗できないんだ」と話した。
彼女は今回の命令で政府が用意した7階建てのアパートに既に移転済みである。移転には、5千元(約6万円)の奨励金と1千元(約1.2万円)の移転費用が支給された。「ここに住むと、生計が立たない」と彼女は漏らした。
ある商店の店主も今年年末までの立ち退きを通達された。彼女もまた同ダム建設のため、2000年に現地に移ってきた。「移住するたびに、私たちは貧しくなっていく」と彼女は涙をこらえながら話した。
ドイチェ・ベレは中国の国土資源部の高官の今年4月の発言として、この先3~5年間、同ダム周辺では地質問題により、さらに10万人規模の集団移住を行う、と伝えた。
地質専門家は、「想定中の地すべりや崖崩れが発生した場合、ダム周辺の数万の家屋が全壊する」と警告した。中国当局はこれまでに地質災害による死者の人数を公表していないが、中国メディアの報道によれば、2007年以降、少なくとも48人がそれによって亡くなっている。
一方、三峡ダムによる水質汚染も根が深い。四川大学の艾南山教授は、「同ダムによる水質汚染は防げない。水流の速度が遅くなったため、大河本来の自浄能力が弱まってしまったからだ」と指摘している。
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