[ワルシャワ/ミラノ/ウィーン 22日 ロイター] – 欧州の一部都市でインフルエンザの予防接種への需要が急増してワクチンが不足しており、新型コロナウイルスとインフルエンザの両方の感染が広がる「ツインデミック」が起きるリスクが高まっている。
欧州の各国政府は今年、インフルエンザワクチンの発注を増やし、予防接種を受けるように啓発活動を進めている。通常より早い接種で4億5000万人に上る欧州人口の接種率を高め、医療機関の負担を減らす狙いだ。
ワクチン大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)<GSK.L>やサノフィ<SASY.PA>、アボット・ラボラトリーズ<ABT.N>、セキーラスは需要増加を想定し、欧州への供給を平均で30%増やした。ワクチンメーカーを代表するワクチン・ヨーロッパは21日に公表した声明で、フル稼働しているが最近の追加需要に追いつかないと述べた。
欧州の各都市や政府の当局者、医療専門家とのインタビューでも、ワルシャワなど主要都市で早い時期にワクチンの需要が増え、遅れが出たり一時的にワクチン不足に陥ったりしていることが分かった。
欧州のインフルエンザの流行は10月に始まり、11月半ばから12月初めにかけて拡大する。毎年400万─5000万人がかかり、最大7万人が関連で死亡する。高齢者やリスクが高いグループで多い。
ワルシャワの薬局でマネージャーを務めるGrazyna Lenkowska-Mielniczukさんは「今年は常に患者がワクチンを求めに来る。毎日10人を超える」と話した。ポーランド保健省は今年300万本を購入し、20日時点で160万本が届いているという。
ベルギーでは発注したワクチンのうち3分の1がまだ納品されていない。一部は通常より遅く届くという。政府は今年、昨年より10%多い300万本近く発注した。
人口約10万人のオーストリア南部クラーゲンフルトの当局者は声明で、通常の量のワクチンを1月に発注し、その後新型コロナのパンデミック(世界的大流行)進展に伴い追加注文しようとしたができなかったと述べた。オーストリア政府は昨年より60%多い125万本を発注した。
ワクチン・ヨーロッパは、インフルエンザのワクチンを製造するために要する時間が長いため、製造業者は異例の事態の中で生産を増やすために全力を尽くしたと話す。ただ、現在は生産能力を拡大する余地が限られていると指摘した。
ワクチンの各国への配分は通常、インフルエンザが流行する時期から1年以上前に決める。北半球のワクチン製造は3月上旬に始まる。
GSKの広報担当は、インフルエンザワクチンの保存可能期間が短いことも予期せぬ事態への調整を難しくすると話した。GSKは今年と向こう数年間、ワクチンの製造・供給を増やす予定だが、今後も需要が製造能力を上回るとの見方を示した。
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