専門家によると、中国共産党は全米で起こっている騒乱を利用して米国を攻撃し、香港での統制強化から注意をそらそうとしている。
中国の外交官や国営メディアはここ数日、ソーシャルメディアを利用して、ジョージ・フロイド氏の身柄拘束中の死亡事件をめぐる抗議デモへの米国の対応を批判している。この事件は最近、全米数十の都市で暴力事件を引き起こしている。
ジョージ・フロイド氏は5月25日、警官に膝を使って首を押し付けられた後、死亡した。
5月30日、中国外交部の華春瑩報道官は、中国共産党の香港侵攻を非難した米国務省のツイートに対して、「息ができない」と返事した。これは、撮影された映像から分かっている、フロイド氏が死亡する前に発した言葉を引用したものだ。
華春瑩氏のツイートは、ドナルド・トランプ大統領が、中国共産党が香港に国家安全法を制定した結果、香港の経済的特権を取り消すと発表した翌日に投稿された。中国政府のこの動きは、1997年に香港の主権が英国から中国に移譲された際、香港に高度の自治権を与えるという約束を破ったことを意味しているとトランプ氏は述べた。
中国政府はまだトランプ大統領の決定に正式に反応していないが、国営メディアは米国の抗議デモの報道を強化し、米国の抗議デモと香港で行われている民主化運動をすぐさま比較している。
中国官製紙、環球時報は5月30日、「気をつけて!香港の 『美しい光景』 が全米に広がっている」と題した論評を掲載した。この見出しは、ナンシー・ペロシ下院議長が昨年、香港の民主化デモは「美しい光景」だと発言したことに対する皮肉である。
米国国家安全保障問題担当のロバート・オブライエン補佐官は5月31日、華春瑩氏が米国務省を 「荒らし」 ていると述べ、他の中国の外交官も米国の混乱を見て喜ぶツイートを投稿していると付け加えた。
「私たちの敵対国はこの危機を利用して不和を引き起こし、私たちの民主主義を破壊しようとしています」とオブライエン氏はABCに語った。
どんな危機もうまく利用する中国共産党
ワシントンのシンクタンク、ヘリテージ財団の外交問題上級研究員、ヘル・デール氏は、香港の自治への侵犯を非難する声が広がる中、中国共産党にとって今回の危機は、「プロパガンダの贈り物」であると述べた。
デール氏は大紀元に対し、中国政府は「まるで大皿に盛られて与えられたようなこの状況を最大限に活用しています」と述べた。「私たちが抱えているこの問題を更に悪化させるために、彼らはなんでもするでしょう」
中国政府は米国に対する世界の意見を変え、国内の世論を変え、人種間の緊張を高めて危機を悪化させようとしている、と彼女は述べた。
中国専門家で、『やがて中国の崩壊がはじまる』の著者であるゴードン・チャン氏は、中国政府の具体的な目標は、世界の注目を香港から遠ざけることだが、そのプロパガンダ活動は、米国を弱体化させるための数十年にわたる取り組みの一環であると述べた。
中国共産党は「アメリカに狙いを定め、全体的に私たちの評価を下げようとしています」とチャン氏は述べた。「彼らの本当の目的はアメリカを滅ぼすことです」
デール氏によると、中国共産党は「この事件を器用に利用している」ことが判明しており、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の発生以来、世界的なプロパガンダ活動を強化してきたという。中国政府はパンデミックの間、ウイルスの起源に関する誤った情報を広め、自身を世界的な感染対策の模範として描くことによって、ウイルスの世界的な拡散を引き起こした責任から注意をそらそうとした。
ソーシャルメディアの武器化
ワシントンに拠点を置くシンクタンク、ハドソン研究所の上級研究員で、『隠れた戦争:アメリカのエリートが眠っている間に中国が占領した』の著者であるロバート・スパルディング氏は、中国のような独裁政権はソーシャルメディアを武器にして、米国に混乱と不和をもたらしていると指摘する。
スパルディング氏は、中国政府がTwitter上のボットネットワークを利用して、人々を騒乱へと駆り立てるメッセージを増幅させている可能性が高いと述べ、パンデミックの話題を形成する上で、ボットが重要な役割を果たしていることを示す最近の研究結果を引用した。カーネギーメロン大学のアナリストによると、中共ウイルスに関する議論の40%はボットからのものだったという。これらのアカウントは最も影響力のあるトップ50のリツイート者の内82%を占め、トップ1000の62%を占めた。スパルディング氏は、抗議デモに関する現在の議論について分析しても、同様の結果につながる可能性が高いと述べた。
スパルディング氏は大紀元に対し、「ソーシャルメディアの環境は、国家機関が(抗議デモで)より多くの活動を扇動できる容易なプラットフォームを提供しています」と述べた。「彼らはこれらのプラットフォームを使って暴力を悪化させています」
民主主義への攻撃
米国当局者は、香港の抗議行動を米国の騒乱と同一視しようとする中国政府の試みを非難している。中国政府は一貫して、香港の民主化を求める抗議者たちを、抑圧すべき 「暴徒」 と表現してきた。
「これらは全く異なるものです」とポンペオ国務長官は、5月31日にFOXニュースで語った。「われわれには法の支配があります。今回の事件に懸念を示す善良なアメリカ人が全国にいます。彼らはそれを自由に話す権利があります。中国ではこれら全ての権利がありません。中国共産党はこのような表現の自由を阻止しています」
一方、オブライエン氏は、米国と敵対国との違いについて、「このような状況が発生した場合、私たちはその原因を突き止め、問題を解決します。隠蔽することはありません。そして、これは党のためでも国家のためでもありません」と指摘した。
デール氏は、フロイド氏の抗議デモに対する中国政権の発言の背後にある偽善を非難した。華春瑩氏は6月1日、「すべての命は大切です。私たちはアフリカの友人たちの味方です。我々は、あらゆる人種差別および、人種差別と憎悪の扇動的表現に強く反対します」とツイートした。
デール氏はこのツイートを 「ご都合主義」と退け、中国政権による少数民族への広範な人権侵害と、警察の残虐行為に関する中国の前科を指摘した。
国家安全保障問題の元副顧問であるK.T.マクファーランド氏は大紀元の「アメリカの思想リーダー(American Thought Leaders)」の番組で、米国での騒乱は、中国の独裁主義体制が民主的統治よりも優れているという中国政権のメッセージを助長していると述べた。
「2008年の経済危機であれ、パンデミックであれ、アメリカの抗議デモであれ、路上での略奪行為であれ、弾劾裁判であれ、彼らはこれら全てを取り上げます」とマクファーランド氏は話す。「そして彼らはこう言います。『ほら、中国ではこのような問題はありません。民主主義の国、そして自由市場の国ではこのような問題があります』」
彼女は「アメリカが分裂して見えれば見えるほど、そして路上で略奪行為をしているアメリカ人の写真が多ければ多いほど、これらすべてが、中国のメッセージを助長します」と付け加えた。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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