前線はインド太平洋…安倍元首相、派閥懇親会で中国共産党の拡張に強い危機感示す

2021/12/07
更新: 2021/12/07

安倍晋三元首相は6日、清和政策研究会の懇親会で講演を行った。専制政治と対抗する前線が欧州からインド太平洋に移ってきたとの見方を示し、軍事拡張を続ける中国に対して、1978年締結の日中平和友好条約にある「覇権条項」を引き合いにして強くけん制した。条項は「双方は覇権を求めない」と定めている。

日本政府は補正予算案で防衛費7700億円を計上し、過去最大規模となった。安倍氏は防衛費について「すでに決定している装備品を前倒しで購入する予算だ」と述べた。衆議院選公示日の北朝鮮によるミサイル発射や中露艦隊の日本周回に言及し「それだけ日本をめぐる安全保障環境が厳しくなっていることだ」と強調した。

中国共産党が軍事力を背景に一方的な現状変更の試みを行っていることについては「相当な挑戦であると言ってもいい」と警戒心を示した。

そのうえで安倍氏は、共産主義専制政治との対決の前線が欧州からインド太平洋に移ってきたとの見方を示し、日米同盟の重要さを強調した。日米同盟を補強するために、日米豪印からなる戦略的枠組み「クアッド」で協力関係を強化し、自由で開かれたインド太平洋構想に賛同する国々と安全保障の協力を深める必要があると論じた。

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日中平和友好条約の規定にも言及した。清和会創設者の福田赳夫首相(当時)が1978年に中国と締結した日中平和友好条約には、「覇権条項」が第二条として盛り込まれた。中国は「ソビエト連邦の覇権主義は許さない」考えを盛り込むことを堅持したが、議論を経て「互いに覇権主義を追求しない、いかなる国の覇権と拡張主義にも反対する」内容で合意した。

安倍氏は中国側に友好条約の合意内容とその精神を思い起こすよう呼びかけるとともに、「中国が平和的に、国際法を遵守して成長していくことを期待したい」と述べた。

いっぽう、中国共産党が日本の覚悟を見誤り軍事的な冒険に出ることがないよう、日本は自国の能力を高め、自由や民主主義、基本的人権、法の支配などの基本的価値を共有する国々との絆をさらに深めていかなければならないと述べた。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。