Howard Schneider
[ワシントン 15日 ロイター] – 2001年9月11日の米同時多発テロ後、3日間、全運航を停止した米航空業界の回復には3年を要した。06年に落ち込み始めた米国の住宅建設が、金融危機と景気後退を経てしっかり回復し始めたのはまるまる5年後で、当時潜在的な住宅購入層だったはずの世代が、いまだに購入を控えていることを示す調査結果もある。
市民の行動様式に強い衝撃が加わると、回復には長い時間がかかる――。新型コロナウイルス危機で停止した経済の再開時期を巡り、対立するトランプ政権と各州知事の胸にあるのは、過去のこうした事例かもしれない。
ユタ州の建設業者アイボリー・ホームズのクラーク・アイボリー会長は先週の企業の生き残りをテーマにしたセミナーで、「今回の危機は前回とは異なり、より把握が難しい」とし、「試練は3年続くだろう」と警鐘を鳴らした。
<損失回避性>
行動経済学者らは、今回よりはるかに小さなショックでも、人々の行動様式に長期間影響が残ると指摘している。
調査によると、07─09年の住宅市場の崩壊を目の当たりにしたミレニアル世代(00年前後に成人した世代)は現在も、想定されるペースで住宅を購入していない。フィラデルフィア地区連銀の研究者らによると、オイルショックが起こった1970年代末に運転免許を取得した人々は、他の人々に比べていまだにガソリンの購入量が少ない。
「損失回避性」というのは強力な心理的傾向だ。一部の調査では、偶然ではなく個々の選択によって結果が変わると人々が感じる時には、さらにこの傾向が強まる。今回のケースで言えば、映画館やレストラン、スポーツイベントに出掛けるかどうかといった選択だ。
アトランタ地区連銀のボスティック総裁は今週、マイアミのラジオ局のインタビューで、人々が「出掛けて何かをすることへの自信を失うかどうか」が問題だと指摘。観光業に依存する南フロリダの経済については「人々が飛び抜けたリスクにさらされていると感じていないなら、非常に強く回復する可能性が十分ある。さもなければ、状況は少し厳しくなるかもしれない」と話した。
エコノミストは、足元の企業・消費者信頼感の落ち込みに基づき、中期的な見通しを立てようと試み始めている。
スタンフォード大学のニック・ブルーム教授らのグループは最近の分析で、米国の国内総生産(GDP)が年末時点でも前年比で11%落ち込んでいるとの予想を示した。この分析は、せんじ詰めれば「安心して外出できるようになるのはいつか」という設問を起点としている。この点を巡る不透明感が、GDPの落ち込みの半分に寄与する可能性もあるという。
<回復の形>
景気回復の形を議論しているエコノミストは、「V字型かU字型か」という従来の基準から踏み出す必要に迫られている。
感染拡大が再燃するたびに何度かアップダウンを繰り返す「W字型」や、回復に長期間を要する「チェックマーク型」、さらにはワクチンの発見まで低成長が長期間続いた後に「階段型」で回復していくという説まで出てきた。
カリフォルニア州のニューサム知事は、州が経済活動を再開した時の様子を描いて見せた。レストランは通常の半分の席数で営業を再開し、だれもがマスクを着け、学校では生徒が交代で通学し、大規模集会は禁止される。
「ニューノーマル(新常態)がどんな姿になるかという話をしている。これがノーマルになるということだ」と知事は語った
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