世界中を巻き込んだ今回の新型コロナウイルスによる肺炎のまん延は、防ぐことができたかもしれない。昨年12月には、新型コロナウイルスが研究機関で確認され、各病院はこの情報を受け取っていた可能性が高い。最近、感染例の発生初期の詳細が相次ぎ暴露され、中国共産党政権の隠蔽体質を浮き彫りにした。
「デマ」流布のネットユーザーは全員医師だった
武漢公安当局は、新型肺炎が発生した当初、8人のネットユーザーが「デマ」を流布したとして始末書提出の処分を下した。最近になって、8人は全員武漢市の医師だったことがわかった。
中国メディア・北青深一度は27日、医師8人のうちの1人に取材した。この記事は情報統制によりのちに削除された。
北青深一度の記事によると、この医師は2019年12月30日午後5時半頃、SNSの医療関係者内のチャットグループに、病原体検査結果の写真とともに「華南海鮮市場でSARS感染者7人が確認された」と投稿した。この医師はその後も「コロナウイルスの可能性がある」と追記したうえで、「情報を漏らさないように」と念を押した。
投稿はその後、この医師の意に反して流出してしまった。ほかの医師も、それぞれの医療関係者のチャットグループに「一家3人がSARSに感染した」などの情報を投稿した。
ある医師によると、1月1日にほぼ全ての医療関係者のチャットグループに、この情報が流れてきたという。
同日、国営中央テレビ(CCTV)は、武漢市公安当局が「デマ」を流した8人に対して法に従って処罰を行なったと発表したと報じた。その後、原因不明の肺炎の発生について、言及する医師はいなくなった。
新型肺炎の患者が増えるにつれ、取材を受けたこの医師もこのコロナウイルスに感染していた。12日に症状が現れ、14日に隔離された。24日にICU(集中治療室)に移され、現在、言葉を発することもできないほどの重症だという。医師の両親も感染した。
北青深一度によると、他の7人の医師は現在、新型肺炎の感染者の治療に当たっている。
報道を受けて、世論は「彼らが尊敬に値する人物だ」と8人の医師の処分の見直しを求める声が高まった。中国最高人民法院(最高裁)は1月28日、SNS微博の文章で「法的処罰を受ける必要はない」と異例の判断を下した。
ウイルス発見の一部始終
1月30日、中国メディア・新民晩報は「新型コロナウイルスの発見について」と題するネット投稿文を転載した。投稿者は以前、自身の勤務先が「Institute of Pathog..」と言及していたため、「Institute of Pathogen Biology」(病原生物学研究所)の関係者の可能性が高い。
投稿によると、昨年12月26日、研究所はある患者の病原体サンプルから、コロナウイルスを検出した。さらに分析を重ねると、SARSに類似するウイルスだと結論付けたという。
公衆衛生に関わる重大な出来事のため、研究所はサンプルを中国医学科学院病原生物学研究所に申し送り、再度分析を行った。27日午後、「コウモリに由来するSARSコロナウイルス」に類似する新型ウイルスであると特定した。
投稿者は事の重大さに気づき、試験室を徹底的に消毒し、分析に関わった職員の感染有無を検査した。
投稿者によると、この結果をすぐに病原体サンプルの送付元である病院に通知し、病院は患者を隔離した。27日、28日に投稿者が所属する研究所の幹部は病院、および中国疾病予防センターと情報交換した。29日、30日に幹部らは武漢に出向き、病院と現地の疾病予防センターを訪れた。少なくとも30日までに、武漢の病院にはこのウイルスに感染した患者のケースが伝わっているという。
投稿者は同日、同じウイルスの感染患者が複数人いることを伝えられた。
30日午後、別のウイルス検査会社からも「SARSコロナウイルス」を検出した。「デマ」で処分された8人の医師たちはほぼ同時に、この情報を知り、SNSに流したとみられる。
翌年1月9日、国営中央テレビはようやく、新型コロナウイルスによる肺炎の発生を報道した。
10日、国家医療専門家チームの王広発教授は、感染はコントロール可能な状態で「医療関係者の感染は起きていない」と発言した。
11日、武漢市で新型コロナウイルスによる初の死者が出た。
疾病管理当局者も初期にすでに状況把握
武漢市の医師と中国疾病予防センターの専門家は1月29日、査読制の医療雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で新型肺炎の感染状況に関する研究を発表した。昨年12月~今年1月22日までの425人の患者データを分析した。
この研究は、人から人への感染が2019年12月中旬にはすでに発生していたと指摘した。 また、1月1~11日までに7人の医療従事者が感染していた。
また、論文に示されたデータから1月1日以降、毎日、感染者が確認されていることがわかった。しかし、1月3〜17日まで武漢当局は新規の感染者はいないとした。11〜17日の間、湖北省で両会(議会)が開催された。政治的な安定を重視して、新規の感染者の発表を隠蔽したとみられる。
この研究報告について、浙江大学生命科学研究員の王立銘教授はSNS微博で「怒りで爆発しそうだ。新型コロナウイルスの人から人への感染を示す証拠が意図的に隠蔽されていた」と投稿した。
さらに、「武漢市の医師と中国疾病予防センターの専門家は、1月のはじめにデータを手に入れていたのに、なぜ公表しなかったのか?当局に口止めされたのか」とたたみ掛けた。
いっぽう、中国当局は、新型肺炎をめぐる情報統制の姿勢を崩していない。SNSの微信のセキュリティセンターは25日の公告で、「各種のうわさ情報は人々の恐怖心を煽っている」として、「社会秩序を甚だしくかく乱するニセ情報の投稿者は、3年以下の有期懲役に処せられる」などと警告した。
(大紀元日本編集部)
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