「第一列島線の各国は団結を」日台比が共同戦略計画を策定すべき 比元将軍が提言

2021/09/09
更新: 2021/09/09

元フィリピン海軍副提督ロンメル・ジュデアン(RAdm. Rommel Jude Ong)氏は、米政府系ボイス・オブ・アメリカ(VOA)のインタビューで、南シナ海台湾海峡で中国共産党(以下、中共)の脅威がエスカレートしている中、フィリピン、台湾、日本は緊密な防衛関係にあると述べ、3国が協力して対中防衛政策を展開するよう呼びかけた。

第一列島線に位置するこの3カ国はいずれも、中共の脅威に直面している。同氏によると、3国の管轄する水域には重複する部分が多く、一国だけで海上防衛を担うことはできない。米国でも全部カバーできない。そのため、第一列島線の国々は、共同戦略計画を検討する必要があるという。

沖縄から南のフィリピンまでの第一列島線は、中共からの軍事的脅威に対する最も重要な防衛線であるだけでなく、中国の貿易の流れをコントロールするのに十分な海上輸送ルートでもあるとジュデアン氏は指摘。日本、台湾、フィリピンは、中共の軍事的脅威と現状変更の試みを効果的に抑止し、国際秩序を維持するために、継続的に拡大・改善可能な共同海洋軍事協力メカニズムを構築すべきだという。

フィリップ・デービッドソン米インド太平洋軍司令官は3月9日の議会証言で、中国の急速な軍事力の拡大により「中国が一方的に現状を変えようとするリスクは高まっている」と危機感を表明し、第一列島線の重要性と、それに対抗するために日本をはじめとする同盟国との連携を深める必要性を強調した。

「台湾の合同演習への参加は必須」

ジュデアン氏によると、台湾が第一列島線の中心に位置している。フィリピンにとっては、フィリピンの北側、台湾の南側の海域が最も重要な防衛エリアとなる。日本にとって最も重要な地域は尖閣諸島。地理的には台湾がハブとなっている。台湾は中共との政治的紛争に対処する経験を最も多く持っており、日本とフィリピンの軍事協力や合同演習に台湾が将来的に参加することは、オプションではなく必須であるという。

同氏は、合同演習の鍵となるのは、共同作戦計画を策定するためのガイドライン(軍事協力指針)と通信システムであると指摘した。そのため、米国や東アジア共同体が採用している軍事協力指針に台湾が参加できれば、日本、台湾、フィリピンが一緒に合同海上演習を行う機会が生まれる。台湾が米国の認証を受けた通信機器を使用することで、軍同士の通信やデータ交換が可能になる。これにより、海洋安全保障協力・対話は、3国間の協力プロジェクトとなるという。

日本とフィリピンは、過去に陸軍と海軍の共同訓練を行っており、今年7月には初の空軍共同演習が行われた。台湾の国防・安全保障研究所の学者である王尊彦氏は、VOAのインタビューで、台湾が安全保障問題で日本やフィリピンとの関係を維持し、将来的には両国の軍事演習を見学または参加することができれば、第一列島線の安全保障を強化することにつながると述べている。

また、日本は東南アジア諸国への武器・機材の輸出を積極的に推進していることから、台湾と異なる装備システムを使用している国との相互運用性は、日本の規範によって徐々に解決されていくだろうと付け加えた。

揺らぐフィリピン政府の外交政策

ジュデアン氏は、台湾の安全保障は日本とフィリピンの両国にとって重要であり、日本は「台湾有事は日本有事」を明確にしているが、フィリピン政府はまだそれを認識していないと指摘した。

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は就任以来、何度も中国を訪問し、「一帯一路」構想への参加を積極的に推進するなど、親中的な姿勢を見せているが、南シナ海問題では、中国政府に対して厳しい姿勢で臨んでいる。一方、米国との関係では、ドゥテルテ氏は昨年2月、1998年に両国間で締結された訪問軍協定を中断したい旨を米国に伝え、その後3回にわたって期限を延期し、今年7月30日に全面再開すると発表した。

ジュデアン氏によると、ドゥテルテ氏は米中の間でバランスを保とうとしているが、そのアプローチは「極端すぎて、ほとんど効果はない」。同氏は、ドゥテルテ氏の米中両国に対する外交政策の迷走は、同盟国間の軍事協力に影を落としていると指摘した。

また、ジュデアン氏は、中共がフィリピンの政府部門に浸透し、偽情報を流布していることに懸念を示した。主な脅威は、政府部門への浸透であり、国家安全保障に不利な政策が採用される可能性がある。偽情報は、世論の分裂を引き起こす。同氏は、中共が来年のフィリピンの大統領選挙に干渉することを恐れているという。

フィリピンと台湾のQUAD加盟の見通しについて

ジュデアン氏によると、フィリピンは、中共ウイルス(新型コロナウイルス)によって経済的にだけでなく軍事的にも大きな打撃を受けており、実際の作戦態勢として中共と戦争できる状態ではない。QUAD(クアッド、日米豪印戦略対話)への参加は技術的に困難であり、QUAD加盟国の海軍との捜索・救難共同訓練がより現実的なアプローチであるという。

インド太平洋地域の戦略的重要性が高まっている今、QUADの4カ国の枠組みを越えて、より多くの加盟国が参加する「Quadプラス」の構築が強く求められている。イギリスとフランスはすでにQUADとの共同演習を行っている。フィリピンや台湾の参加も期待できるという。

それに対し、王尊彦氏は、国際社会における台湾の特殊性から、台湾軍が国際的な実戦演習に参加することは通常困難であると述べた。「QUADが人道支援および災害救援(HADR)の演習を行えば、台湾は比較的容易に参加できるかもしれない」という。

QUADに加えて、同氏は2015年に台湾と米国の間で締結された「グローバル協力訓練枠組み(GCTF)」をプラットフォームとして活用することを提案した。「日本もGCTF活動に参加している。今後、日米豪印4カ国がGCTFの活動に参加する機会があれば、台湾は実質的に同盟国と意見を交換でき、さらには他の協力分野でも話し合うことができる。QUADプラスという形でなくても、実施可能な範囲で、まずは同盟国と実質的な協力関係を築くことがより重要である」と述べた。

(翻訳編集・王君宜)