焦点:トランプ陣営が選対本部刷新、「データ分析」で立て直し

2020/07/20
更新: 2020/07/20

[ワシントン 16日 ロイター] – 11月の大統領選挙で再選を目指すトランプ米大統領が選対本部長のブラッド・パースケール氏を降格した。陣営は共和党政治ストラテジストの経歴が長いビル・ステピエン副本部長を後任とし、戦略立て直しの指揮を執らせる。トランプ氏が依然として自制心を示すのを拒む中で、陣営の多難な戦いは新たな段階に入った。

交代は投票まで4カ月を切ったタイミング。関係筋によると、ステピエン氏は激戦州での支持獲得に必要な戦略に焦点を絞るべく、仕切り直しに取り組むとみられる。

トランプ氏は全米調査でも接戦州調査でも、民主党の候補指名が確定しているバイデン氏に差を広げられている。有権者が新型コロナウイルス危機や人種問題、景気後退などへのトランプ氏の対応に不満を強めているためだ。

自分も共和党ストラテジストで、さらにニュージャージー州知事選でクリスティー氏が2度勝利した際にステピエン氏と働いたマイク・ドゥハイム氏によると、ステピエン氏はデータの理解に優れ、資源を投入し有権者に狙いをつけるに当たってデータをどう使うかに精通している。「トランプ陣営の上層部に選挙のベテランは多くない。ステピエン氏はあらゆるレベルで選挙戦に関わった経験がある。数字を冷静に読んだり、対処法を考えたりすることができる」と話す。

ただ、他の上級アドバイザーたちがトランプ氏に対してできなかったことをステピエン氏ができるかどうかは、全く別の話だ。まだ2期目に向けての公約をまとめておらず、衝動的でもあり、わがままな大統領。彼を制御するという任務だ。

事情に詳しい関係者によると、ステピエン氏の昇格により、トランプ氏の娘婿で選挙陣営の主導的な立場にあるクシュナー大統領上級顧問の力が強まる見通しだ。トランプ氏の顧問の1人は「ステピエン氏は100パーセント、クシュナー派だ。クシュナー氏は今でも選挙陣営の要だ」と話した。

<大統領との相性>

ステピエン氏は16日、引き継ぎ式よろしくパースケール氏とともにワシントン郊外の選対本部に姿を見せ、スタッフらにあいさつした。

トランプ氏が突如、パースケール氏降格をフェイスブックに投稿したのは14日夜。選挙顧問2人によると、トランプ氏は政治的な問題が深刻化したこの2週間、パースケール氏について非公式に不満を言い続けていたという。

複数の顧問によると、トランプ氏は世論調査の支持率低下を気にし、そうした数字は正しいのか熱心に知りたがっているが、自分のやり方を改めることには抵抗している。

ある陣営幹部によると、ステピエン氏はスタッフに対し「毎日が自分自身の選挙戦であるごとくに戦え」と鼓舞。トランプ氏の支持者を投票所に動員するべく、強力な有権者層を確保することに注力すべきだと述べたという。

ステピエン氏はジョージ・W・ブッシュ氏(子)が再選された04年の大統領選や、08年に大統領選に出馬したジョン・マケイン氏の陣営に関与した。16年の前回選挙でもトランプ陣営に協力し、18年の中間選挙ではホワイトハウスの政治ディレクターを務めた。

ステピエン氏とトランプ陣営はインタビューの要請に応じなかった。

ステピエン氏は選対本部の声明で「選挙戦は競り合っている状態だ。16年の大統領選で世界をヒラリー・クリントン氏勝利と確信させたメディアの世論調査は、今回も同じ穴のむじなだ。連中は今回も失敗する」と表明している。

トランプ陣営はバイデン氏についての分析や、バイデン氏との国政展望の違いを明確に示すことができていないと批評されている。ドゥハイム氏は、ステピエン氏がこうした点でメッセージを磨き上げるのに貢献すると見込んでいる。

ただ、複数の顧問によると、ステピエン氏は自分が脚光を浴びるのを嫌うタイプで、そうした裏方の役回りに徹するのは通常の大統領にはちょうど良いが、トランプ氏とはうまく合わない恐れがある。トランプ氏は自分のチームのメンバーが公の場面で自分を守っているように見せることが好きだからだ。「トランプ氏はテレビで自分と一緒に映って、自分をもり立ててくれる人物が欲しいのだ」。

(Steve Holland記者、Jarrett Renshaw記者)

Reuters