【大紀元日本10月5日】この秋に阿久悠さんが天国へと旅立ちました。「思秋期」は阿久悠さんが、思春期の少女に贈った秋の歌でした。春の出会いの喜びを胸に秋の別れを涙で追憶する失恋のドラマを、岩崎宏美さんが哀歓を込めて歌いました。
「足音もなく行き過ぎた季節をひとり見送ってはらはら涙あふれる」心境を、今は亡き阿久悠さんに贈りました。青春は忘れもののように過ぎてから秋の季節に気がつくのだと、阿久悠さんはこの歌に記しています。無邪気な春の語らいや、はなやぐ夏のいたずらや、笑いころげたあれこれを思う秋の日に、若い人はしばしば人生に目覚めます。
春の忘れものは、秋の物思いの中で引き出される宝ものです。失恋という喪失を通じて獲得した痛みが、人に優しくなれる心をノックします。それは思秋期が贈るラブレターなのです。
少女は紅茶を飲みながら、絵葉書を書き綴ります。「お元気ですかみなさん、いつかあいましょう」。こわれやすい青春の思い出は、再会を期する思秋期の挨拶に出会いました。それは天国へと赴いた阿久悠さんが、私たちに遺したメッセージでもありました。「地上とは、思い出ならずや! みなさんお元気で、いつかまたきっと会いましょう」と告げる秋晴れのお別れでした。
(環)
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