大金で自由を買う 増える中国人投資移民

2010/08/16
更新: 2010/08/16

【大紀元日本8月16日】カナダのモントリオールに在住のミカエル・シャレット(Mikael Charette)氏は、移民申請者の経済状況の審査を担う弁護士である。顧客の中には、毎年、数千人の中国人が含まれる。いずれも百万の富を築いた中国の富裕層。どうして中国の裕福な生活を手放してカナダに移民するのかと聞くたび、よく次のような返事が返ってくるという。

「われわれは虎かもしれない。常にどこかにハンターがいるのだ」

中国の政局が揺れ動いている今、改革開放後の海外移民ブーム第二波が、近年になって静かに起こっている。移民申請者の多くは中国の億万長者で、金銭的には豊かだが、つねにさまざまな不安を感じている。そこで、彼らの多くは、投資による移民という選択肢を選んだ。

急増する中国人の投資移民希望者

8月5日のニューヨークタイムズが関連情報を伝えている。同記事によると、最近、米国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、香港では、中国大陸の人による移民申請業務が大幅に増えている。

1975年頃、中国の一人当たりのGDPは410ドルであったが、34年後の2009年になると6567ドルに増えた。上海の「胡潤富豪リスト」によると、中国には現在、百万ドルを有する富豪が87万5千人で、前年比で6.1%上昇している。

富裕層の増加に伴い、多くの富豪は二つの家の所有を求めるようになる。つまり、中国で続けて儲けることもできると同時に、外国の国籍を有するか、または永住の身分を持つことを希望している。これによって、彼らは最大の安全を手にし、自由に国際旅行やビジネスをすることも保証されるのである。

昨年7月から今年の1月まで、オーストラリアの国籍または永住権を取得した中国人は1万3371人で、イギリス人とニュージーランド人を超えて、はじめて同国の移民者数の1位となった。

一方、BBC放送によると、過去2年間で、カナダの永住権を獲得した中国人投資移民者数は、倍増した。

カナダは、6月から投資移民の関連法案を修正。投資移民の必須条件である、資産額80万カナダドルと投資額40万カナダドルの基準を、それぞれ160万カナダドルと80万カナダドルに切り上げた。カナダのケベック州が、政策実施を10月に延期したため、同州への移民希望者が急増。そのうち、中国人申請者が85%を占めているという。

大金で自由を買う

中国での生活が豊かになっているのに、これらの富裕層はどうして海外への移住を希望しているのか。すでにカナダに移住したある女性は、「三鹿粉ミルク」を理由として挙げた。

2008年に中国で大騒ぎとなった「三鹿粉ミルク」事件では、メーカーが粉ミルクにメラミンを大量に混入したことが摘発された。中国のブランド品であった三鹿粉ミルクの飲用で、数十万人の乳幼児が健康を害した。

今年、標準値を数十倍、数百倍も超えたメラミン混入の乳製品が市場に出回っていることが、再び発見された。子どもの安全を何よりも大事にする中国の親たちは現在、中国の粉ミルクを使用せず、高価な輸入品に切り替えた。

海外移住の理由を尋ねられた中国人は、おおよそ、「子どもによい教育を受けさせたい」「汚染のない環境」「医療施設や条件が整っている」「食品が安全」「住宅が広くて安い」などを挙げる。生活の質に関わるこれらの問題は、GDPの増長ばかりを追求する中国政府の考慮の中に入っていないということである。

中国マネーと人材の海外流出

生活の質のほかにも移民の理由がある。10年前にカナダに移住したある女性が中国を離れた理由について、いま流行っている流行語を引用して話した。「中国の生活環境はきわめて危険で、そこに生まれ変わらないように祈るばかり」

中国は今だんだん豊かになっているが、貧富の差も日増しに広がっており、富裕層たちに不安を感じさせていると同氏は語ってくれた。

異常な構造が、異常な貧富差を生み出している。富裕層から絞り取られているといわれる貧困層は、富裕層をきわめて憎み、その矛盾と衝突は深刻化する一方である。

30代の徐氏によると、「中国では、儲けたお金はみな、衣食住や旅行などに消費していたが、米国ではより自由に自分なりの創造性を発揮でき、かつ生活をより楽しむこともできる」という。

昨年、カナダだけでも、1823人の中国人が投資移民で移住してきた。投資移民に必要とされる最低金額で計算しても、少なくとも約7億ドルのお金がカナダに流入したことになる。実際の数字は、この数倍になると考えられている。

中国社会の激変と不安定要素の増大に伴って、億万長者や各領域の有能な人材が、競って海外移住したり、移住を計画している。このような状況が続けば、チャイナ・マネーばかりでなく、中国の人材も過度に流失することになりかねないと懸念されている。安全でよりよい生存環境を選んで生活するのが人間の本能であるだけに、人為的にコントロールしようとしても、中国政府の思惑通りにはいかないだろう。

(翻訳編集・小林)