南シナ海への米の介入、中国が警告 専門家「領土争議の挑発は内部闘争の証し」

【大紀元日本9月22日】今週24日、ニューヨークで行われるオバマ大統領と東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳との会談で、南シナ海の領有権問題についての協議が行われるとの見通しが示された。尖閣諸島の漁船衝突問題を巡る日中間の緊張が高まる中、米国の南シナ海問題に関する態度表明が注目されている。

AP通信19日の報道によると、オバマ大統領と東南アジア諸国連合の首脳たちは今回のサミットで、米国が提出する連合声明を共同発表する予定。この声明は「いかなる武力または武力の脅威を用いて、南シナ海の争議問題を強制的に解決することに反対する」との内容で、南シナ海の航海自由と地域安定の重要性を強調するほか、関係する国々に国際法の尊重と同海域での自由貿易を呼びかける方針。

共同声明の発表予定について、中国外務省は21日、南シナ海の南沙諸島領有権問題に介入しないよう米国に警告した。「南シナ海に関係ない国が介入し、南シナ海問題を国際化することに断固反対する」と姜瑜副報道局長は定例会見で述べた。また、中国共産党機関紙「環球日報」は20日、同声明は中国をけん制する目的であると報道した。

「南シナ海は中国の核心的な利益」

南シナ海は、通商ルートとして国際貿易上、重要な役割を果たすだけでなく、石油・天然ガス、漁業資源、薬用資源となるバイオマスなども潜在する。南シナ海の領有権問題については、中国と東南アジアの6カ国間で争いが絶えない。特に最近、中国大手企業が同地域で新エネルギーや鉱物の埋蔵地を探査する動きに、各国間の緊張が高まっている。

AP通信の報道によると、24日のサミットのための準備会議で、米カート・キャンベル(Kurt Campbell)国務次官補と米国家安全保障会議のジェフリー・ベーダー(Jeffrey Bader)アジア上級部長は、クリントン国務長官による7月のハノイでの南シナ海に関する声明は、それなりの成果が見られており、中国は明らかに「協力の道に戻っている」とASEAN各国の大使らに説明したという。

7月、クリントン国務長官はハノイで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)で「南シナ海の紛争を平和的に解決することは、米国の国益に係る」と発言。南シナ海の領有権は多国間協議を通して解決すべきという姿勢を打ち出し、南シナ海の諸島や周辺海域を自国の領海と主張する中国をけん制した。

南シナ海への中国のスタンスを米国が不安に感じたのは、今年3月初め、スタインバーグ米国務副長官とベーダー国家安保会議アジア上級部長が中国を訪れた時だった。中国の政府高層は二人に、台湾、チベットのほかに、南シナ海を自国の主権、領土保全と関連した「核心的利害」地域とみなしていると話した。中国政府が米国に中国の南シナ海における立場を初めて公式に通知する席となった。

領土争議の挑発は、中南海内部闘争を反映か

米国在住の中国問題専門家、石藏山氏によると、南シナ海は中国の核心的な利益であるというスタンス発言は、中共軍部と米国軍部の間の話題であるはずだ。中国政府が米政府高官にこのように発言したのは異例なことであり、中南海高層の内部闘争に関係している可能性があるという。

ここ数十年、中国海軍は、速やかな発展を成し遂げ、南シナ海の海域に対する権利をコントロールする実力を備えていると考え、ますます強いメッセージを発信するようになってきている。そのため、ほかの国々に警戒心を与えてしまった。しかし南シナ海問題をASEANの間で協議することは北京政権にとって最も望ましくないことであると石藏山氏は指摘する。

実際、南シナ海は核心的な国益と発言した後、国際社会で一連の反発を招き、中国のトップ責任者らのメンツを大きく潰している。裏には中国軍部の一部権力者が中南海高層に難題を造り出していることを石蔵山氏が指摘した。民族主義は最も扇動されやすく、現在、尖閣諸島の漁船衝突も、裏に挑発する勢力がいると考えられる。その狙いは、南シナ海海域や、米国や日本に向かっているのではなく、「中南海高層にターゲットしている」と、同氏は考えている。

また、「南シナ海において北京は制海権もないし、制空権もない。ASEANのほかの国々の陸地は南シナ海との距離が近いため、陸基地の空軍とミサイルに頼ることができるが、中国は海の基地に頼るしかない。南シナ海問題で米国がもしASEAN各国を支持し、これらの国に武器輸出などのメッセージを発信すれば、北京はすぐさま優位を失ってしまう」と同氏は語る。

(記者・李明、薛飛 翻訳編集・趙莫迦Zhao Mojia)
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