メキシコ「国境の壁」試作品お目見え、大統領の公約実現に一歩

Heather Somerville

[サンディエゴ(米カリフォルニア州) 23日 ロイター] – トランプ米大統領の就任から9カ月、重要選挙公約の実現に向けた具体策がようやくお目見えした。不法移民阻止のため、メキシコとの国境に築くとしていた「国境の壁」の試作品だ。

米サンディエゴにあるオタイ・メサ国境検問所から数キロ離れた地点に、高さ最大9メートルのコンクリートや鉄製の8種類の壁がそびえ立った。トランプ大統領は、カリフォルニア州からテキサス州まで、メキシコ国境の全区間沿いに建設すると公約している。

1カ月かけて建設された試作品が実際に採用されるかは分からない。米議会は、いまだ総額216億ドル(約2兆4000億円)に上る壁建設費用の予算計上には消極的な構えを見せている。

米国境警備隊の担当者は23日、トランプ大統領の公約が動き始めたことを歓迎した。国境の壁建設は有権者の大きな支持を集め、大統領選勝利の要因の1つとなった。

「現在の設備は、設置から20年以上経過している」。国境警備局サンディエゴ支部の警備担当者ロイ・ビラリアル氏は記者団を案内しながらそう語った。「改修は必要だろうか。もちろん必要だ」

現在は、メキシコとの国境3058キロメートルのうち、1052キロメートルに1重もしくは2重、3重のフェンスが設置されている。サンディエゴにある高さ約5.5メートルの2重目のフェンスは、過去3年間で2000件近い侵入を許してきたという。

仮にトランプ大統領が壁建設予算を獲得できずに終わっても、国境警備隊は、老朽化した既存の壁を改修する際に、今回の壁デザインの一部を取り入れるかもしれないと、ビラリアル氏は付け加えた。

壁の試作品8種類の制作には、全米から選ばれた6業者が参加。試作品は、今週すべて完成する見通しだ。

うま味のある今回の契約を勝ち取ろうと、参加業者は壁の美観に注意を払っている。試作品の1つには真っ青な鉄鋼が使われ、別の壁は表面がレンガで覆われている。ベトナム戦争で余った波型の鉄鋼板を使って作られた、この地区に現存するぼろぼろのフェンスとは、対照的だ。

11月後半には、ある民間企業が、30日から60日かけて試作品の壁の登りやすさや、その下が掘りやすいかを試す作業を開始するという。国境警備隊は、この企業名を明らかにしなかった。

最終的には、複数の試作品のデザインを組み合わせたものを採用する可能性もあると、ビラリアル氏は言う。

コンクリートのどっしりした壁には威圧感があるが、国境警備隊の活動にはマイナス面もある。壁を乗り越えようと近づいてくる人がいても、隊員の視界に入らないのだ。

「壁の大きさはそれほど問題ではない。(壁の向こうにいるのが)10人なのか30人なのか、ライフルを持っているのかを確認できるかどうかが問題だ」。国境警備隊に30年勤務して2011年に退職したロウディ・アダムスさんはそう語る。「それを確認した上で、どう対応するかを決めるのが大事だ」

試作品8種類のうち、2種類は反対側が透けて見えるデザインだ。

環境保護を訴える活動家は、コンクリートの壁を建設すれば、連邦政府の保護対象に指定されているヤマネコの一種オセロットも含めた野生動物の往来の妨げになると警告している。

また、コンクリートで壁を建設するには、世界最大級のコンクリートサプライヤーの参加がなければ困難だろう。メキシコのセメックスと

スイスのラファルジュホルシムはロイターに対し、壁関連のプロジェクトには参加していないと述べた。

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