明日のことを自慢するな。今日、何が起こるか分からないのだから

離れ島のある町に、信心深い男が住んでいました。妻をめとりましたが、長いあいだ子どもができませんでした。

ある日、妻が子どもを授かったことが分かり、男はこの知らせに大喜びして、妻に言いました。

「きっと男の子に違いない。私たち夫婦に喜びと幸せをもたらしてくれるだろう。よい教育を受けさせて厳しくしつけるつもりだ。そうすれば私の評判を受け継いで、家はますます栄えるだろう」

すると妻は、喜びと期待で頭がいっぱいになっている未来の父親に言いました。

「ばかげたことを言わないで。未来がどうなるかなんて分からないでしょう。お産が無事にすんで、赤ん坊が女の子でなく男の子で、その子が元気で健康に育つとどうして分かるの? 無意味な計画を立てるのはやめて、人生で起こることはすべて神様にゆだねましょう。そうしないと、あのイスラムの修行僧みたいになってしまうわよ」

男が修行僧について尋ねると、妻は次のような話を語り始めました。

昔、あるイスラムの修行僧が王様に仕えていました。修行僧は毎日、王様からお菓子とお椀一杯の蜂蜜を与えられていました。彼はお菓子だけを食べ、蜂蜜はつぼに入れていつも頭の上にのせていました。蜂蜜は当時とても高価なものでした。ある日、蜂蜜のつぼがあふれるほどいっぱいになり、修行僧はこれを市場に持っていったらいくらで売れるだろうかと考えました。

「この蜂蜜を売ったら10頭の羊が買えるだろう。それぞれが子を産めば、1年後には20頭になる。順調に増えていけば4年後には400頭になるはずだ。そうしたら牛のつがいと土地も手に入れよう。雌牛は子をたくさん産むだろうし、雄牛は土地を耕すのに役立つ。牛乳を売ることもできる。5年後には牛も相当な数に増えて、私は大金持ちになっているだろう。そうしたら豪邸を建てて召使いを雇い、貴族の美しい娘と結婚しよう。すぐに妻は身ごもり、健康で立派な息子を生むはずだ。誕生の瞬間には幸運の星が瞬き、息子は幸せで恵みの多い人生を送り、亡くなった私の名声を高めてくれるだろう。でも、もし息子が私の言うことに逆らったりしたら、このつえでたたいてやる。こうやって」

修行僧が独り言をつぶやきながらつえを振り上げると、ちょうど頭の上のつぼに当たりました。するとつぼが割れ、蜂蜜は流れていきました。

「これで話はおしまいよ」信心深い男の妻は言いました。「まだ起こっていないことでのぼせ上がるのはよくないわ。ソロモン王もこう言っているでしょう。『明日のことを自慢するな。今日、何が起こるか分からないのだから』」

(Ancient Tales of Wisdomより)
(翻訳編集・緒川)

おすすめ関連記事:【子どもに聞かせたい昔話4】 アリとぞう