中国の古代建築は深厚な中華伝統文化に根付いています。それは天人合一の宇宙観、道法自然の思想、調和を重んじる理想を体現し、中国の伝統文化のなかで大きなウェイトを占めています。
中国の古代建築は素朴で淡泊であるとともに、優雅で含蓄があります。これは儒家思想の「中和の美」そのものであり、芸術です。大げさな表現や奇々怪々な構造はなく、だれが見ても理解できる美しさを中国古代建築は備えています。これは、中華民族の温厚さの表れでもあります。
四合院
儒家思想の忠孝礼義は数千年間にわたり、中国人に影響を及ぼし続けてきました。儒家はまた、身を修め、家を斉(ととの)え、国を治め、天下を平定する、ということを説いています。そして中庸の道に従い、分相応の行いをすることを重んじます。これらは君子の品格です。
このような儒家の思想を体現した建築様式は「四合院」と呼ばれています。東、西、南、北の四面を家屋で囲い、中庭を持つこの建築様式は中国の伝統的なものです。扉を閉めれば一つのプライベートな空間を形成し、中庭でお茶を飲みながら会話を弾ませることができます。
何世帯もの人々が一堂に集う大家族は四合院ならではの光景です。四合院で暮らす一族はみな老人を尊重し幼い子供を愛し、感情を重視し礼義を尽くします。四合院を見れば、華人がどれほど親孝行や家族の繁栄を重視するかすぐにわかるでしょう。
尊卑の別があり、内外の区別を設ける四合院は社会の縮図です。大きい宮殿から小さい住宅まで、四合院の基本的な設計は広く応用されています。それは中国の伝統的な建築様式であるとともに、中国の思想境地を体現したものでもあるのです。
寺院と道観
非開放型の四合院とは逆に、中国の寺院の建築は内外の空間を意図的に曖昧化しています。殿堂、戸や窓、歩廊などの側面は全部開放式になっています。これは天人合一、陰陽転化という宇宙観と関係しています。
深山に抱かれた古い寺は大自然と一体になります。優雅で厳かな雰囲気を醸し出すとともに、大自然の情趣を忘れません。軒が反り返る様は、鳥の翼や三日月に似た飄逸の味わいを出し、重厚な建築を軽やかに仕立て上げています。躍動感ある軒先は人の目線をはるか高い天空まで誘い、天上の世界にあこがれを持たせます。
唐代の建築は雄大で、素朴で、力強いものとなっています。今日まで比較的完全に保たれているのは五台山の南禅寺正殿と仏光寺の正殿です。南禅寺は唐代の建中三年(西暦782年)に建てられ、現存する最古の木造寺院です。仏光寺は唐代の大中十一年(西暦857年)に建てられ、寺院の中にある「彫像、壁画、墨跡、建築」という四絶は「世の中の宝物」と称されています。
そのほかにも、舎利塔は各地に建てられ、聳え立つ様は素朴で力強い美を備えています。
広西省の容県にある真武閣という道観は構造が巧みで、ほかに例を見ない建築様式です。それは「てこの原理」を利用した純木製の建築で、鉄釘一本たりとも使われていません。木材が互いに噛み合わさり、互いに支えあうことで今日まで聳え立っています。
四百年来、真武閣は五回の地震、三回の大型台風に見舞われましたが倒壊することはありませんでした。「天南傑構」として讃えられている真武閣は岳陽楼、黄鶴楼、籐王閣と共に、「江南四大名楼」と称されており、更に、今まで唯一の再建することなく保存されている有名な楼閣です。
中国の古典庭園
中国の古典庭園は唐詩・宋詞と山水画の影響を受け、詩情画意に満ち溢れています。更に、古典庭園は文人たちの山水写意の模範です。庭園は自然の精華を摂取し、建築家によって芸術の息吹を吹き込まれます。庭園内では亭台楼閣と草木花鳥が互いに調和し、彩色を施した梁や棟、扁額などと共に色彩豊かな空間を作り出します。優雅な美が感じられると同時に、見る者を返本帰真の境地へと誘います。
また、四合院、寺院と道観、中国古典庭園はそれぞれ中国の百姓、修行者、文人を代表しています。
(文・沈静 / 翻訳・平清竹)※看中国より転載
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