昨年12月25日から 始まった神韻日本ツアーも、いよいよ最後の京都公演となった。当地で行われる3公演はほぼ満員札止め。神韻芸術団は中国古来の雰囲気を色濃く残す京都で伝統文化の華をひらいた。
「最初から最後まで興奮した!命の洗濯でした」と話す中村清さんは以前、大阪で消防局の局長をしていた。親友に勧められてやって来たが、劇場に来てみて、ダンサーたちの一糸乱れぬ舞踊、また背景とぴったりと合った技術にも本当に感動した。「日頃の練習の賜物でしょう。すごいです」と感心しきりだった。
今の中国、ちょっと道義に欠けているところがあるという中村さん。演目の中でそういった部分を正しているような場面がたくさんあり、「これが正しいんだ」という価値観を踊りで示していて心打たれた。神韻は昔の伝統を守ったらこうなるということを教えていると語る。
音楽も哀愁感が漂う旋律など、日本のものと似ているところがあり素晴らしい。歴史の深みを感じる。素晴らしい歴史をもっている中国が伝統を重んじることでもっと素晴らしくなればいいと語った。
能樂幸流小鼓方で重要無形文化財総合指定保持者の林吉兵衛さん。舞台に立つ仕事を生業にしている者として、神韻の公演から何か力があるものを取り入れられればいいなと思い、今日の公演を楽しみにしてきたという。
能楽は650年以上、スタイルを変えずにやっている。伝統というものを勉強して後世に伝えていくことの難しさを痛切に感じているという林さん。
いかに動き、動作、エネルギーを抑えながら、なおかつそういう力を表現できるかというのが能の世界。神韻の舞台から、能とは正反対の、直接受ける力というものを感じ、非常に感銘を受けたという。
その力について、林さんは修行、鍛錬というものは勿論のこと、神韻の団員が一致団結して客席に力を与えており、本当に素晴らしいことだなとすごく感じた。
中国伝統文化は神が伝えたと言われ、中国だけではなく日本を含めた多くの国々に大きな影響を与えてきた。林さんは「『能楽』の演目にも神仏が出てくるが、神韻の舞台からも神、佛の力といったものがよく伝わってきた。信じるものが人間、生きているものの心の支えとなっているというのが芸術の本質だと思う」と語った。
(文・大道修)
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