「出世街道まっしぐら」「出世コース」世のお父さん方がこのことばに駆り立てられるように、日々会社のため、家族のために頑張っていたのも昔のこと。今は、出世などとんでもない、会社が潰れないだけでありがたいということでしょうか。「出世」ということばをトンと耳にしなくなりました。
ところで、中国の人がこれを見たら、どんな「街道」、どんな「コース」を連想するでしょうか。中国語の『出世』には大きく分けて二つの意味があります。一つは、「世に出る」ということで、もう一つは、「世から出る」ということです。「世」とは俗人の暮らす「世間」のことで、その俗世間に現われ出るということは、「人が生まれ」たり、「新たなものが現われる」ということであり、その俗世間から出て行くということは、「神仙の境遇に入」ったり、「出家する」ということです。いずれにしても、中国語の『出世』には、日本語のような「昇進・栄達」といった意味はありません。
では、この意味は、いったいどこから出てきたのでしょうか。日本ではかつて、出家した公卿の子息を「出世者(しゅっせしゃ)」と呼んでいました。彼らの昇進がひときは早かったことから、僧侶が高い位に昇り大寺の住持になることを「出世」と言うようになり、それがさらには、今日のように、一般に「高い身分や地位に昇進する」という意味に用いられるようになったようです。
(智)
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