スイス、ジュネーブに位置する自然史博物館で、ローマ神話に登場する二つの頭を持つ神にちなんで「ヤヌス」と名付けられたギリシャリクガメが発見されたのは今から22年前のことだ。
1997年9月3日に孵化したヤヌスは二つの頭を持って生まれてきた。当時、生存の可能性はほぼないだろうと考えられていたが、博物館での徹底した飼育のおかげで、今年9月には23歳を迎えることになる。
ヤヌスは、博物館に寄贈されたカメの卵から孵化し誕生したが、生まれた時から双頭であったため、短命だろうと考えられていた。
博物館の獣医学者であるアンドレアス・シュミッツさんは「亀は頭を甲羅に引っ込めて身を守りますが、ヤヌスにはそれができません。もし自然界で生きていたら、数時間、もしくは数日の命だったでしょう」とRTSのインタビューで語った。
そして双頭であることがもたらす別の危機は、それぞれが独自の脳を持っているということである。このことについてアンドレアスさんは「ヤヌスには、司令塔になっている頭が一つあるようです。しかし、それぞれの頭が別の方向に移動したいと考えた時、脳が混乱してしまうため、全く動かないという場面もよく見受けられます」と解説する。
博物館の管理者であるピエール・アンリハイツマンさんは「博物館で、基本的に動物の飼育をすることはありませんが、ヤヌスは別でした。彼女のために飼育環境を整え、健康的に過ごせるよう充分配慮しました」とコメント。
また、博物館での特別な治療の甲斐もあり、ヤヌスは想像以上に長生きしている。さらに、コロナウイルスの影響で博物館を閉鎖している期間、ヤヌスの飼育環境をUVライトに変え、さまざまな種類のレタス、ベリーを餌として与えてることでアップグレードを図ったという。
博物館のセキュリティとメンテナンスを担当するニコラス・デュムーリンさんは、今年の夏から、博物館の研究棟屋上にヤヌス専用の外へ出る通路を設置し、健康維持に必要な、紫外線とビタミンDを摂取できるようにしたと加えた。
ヤヌスは毎日お風呂に入り、カビが生えないよう甲羅を清潔に保っている。飼育員であるアンジェリカ・ブルトンさんは「ヤヌスはお風呂の時、足を伸ばしてリラックスしています。時々リラックスしすぎて寝てしまうこともありますけど」とコメントした。
しかし、博物館の徹底した飼育にも関わらず、ヤヌスの甲羅は確実に変形しているとアンドレアスさんは指摘する。ギリシャリクガメの甲羅は本来丸いが、ヤヌスの甲羅はそうでないため、万が一、仰向けになってしまった場合は自力で起き上がることができないのだという。
確かなのは、この珍しい双頭のカメが、これからも長く博物館の目玉であることは間違いないだろう。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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