ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン):ヤング・アーティスト・サマー・ショー
1768年から毎年、夏にロンドンの王立芸術アカデミーで展覧会が開催されています。世界中の芸術家なら誰でもこの権威ある展覧会に自分の作品を出品することができます。
J.M.W.ターナー氏、ジョン・コンスタブル氏などもこの展覧会に出品しています。
アカデミーは、7~19歳の若いアーティスト向けの展覧会「ヤング・アーティスト・サマー・ショー」というものも開催しています。立案者の慈善家のロビン・ハンブロ氏がスポンサーとなっています。
6,200人以上の若い希望に満ちたアーティストが応募し、審査員たちの手によって329点の作品まで絞り込まれました。「作品のレベルの高さに驚きました」と、最近の電話インタビューで語ったメアリー・エールデン氏。エールデン氏は、アカデミーでプロジェクトマネージャーを務めています。
アカデミーの新しいクローレ学習センターでは、最近そのうちの139点の作品が展示されました。エールデン氏は「若きアーティストの作品は、世界的に有名な作品と同じように扱われました」と話してくれました。
若き芸術家の作品は12月31日までオンラインで見ることができます。
教育におけるアート対アート
この展覧会は、若いアーティストを巻き込み、インスピレーションを与える学習プログラムの一つです。また教師にとってもよい学びの場となっています。
イギリスでは、芸術という科目は数学や科学ほど重要視されていません。その結果、「教師は、あまり生徒を芸術に触れさせる機会もなく、教師の研修もあまりできていません」と彼女は言います。
教師たちは、数学や理科の勉強が苦手な生徒たちが、この展覧会で入賞し、クラスメイトからも認められたことで自信を持てるようになった生徒もいるということで、この展覧会は生徒にとってもいい影響を与えています。
展覧会を通して、教師たちは授業で使える新しいアイデアを得ることもできたそうです。作品は特に規定もなく生徒が自由に作ったものです。
このように、自由に作品を作るという経験は子どもたちにとっては素晴らしい経験になるはずです。特にテストや成績評価の面で、精神的にプレッシャーを感じていることも多く、貴重な経験になりました。
素晴らしい作品たち
オンライン展示の329点の作品は、どれも素晴らしく、子どもたちが作ったものだとは信じられないほどの出来栄えのものばかりです。
審査員は「エメラルドの宝石」を描いたトム・ボウクネグトくんの絵の出来栄えは大変すばらしいものだと感心していました。わずか9歳の子どもが描いたと思えないほど細かい描写に、彼の母親が応募用紙にトムくんの年齢を書き間違えたのではないかと思った審査員がいたくらいでした。
才能溢れる若いアーティストの素晴らしい作品が何点もあるこの展覧会。「作品の質そのものよりも、その作品が作られていく過程を見るという経験の方が重要なのです。本当に素晴らしいと思います。子どもたちは何の指示も必要とせず、自分のイマジネーションを生かし、本当にパワフルなイメージを描いているのです。それは彼ら自身の心の中から出てきたものなのです。素晴らしいですね。本当に素敵なことです」とエールデン氏は語っています。
個人的な利益、宣伝のために制作された作品ではなく自由に作った作品なので、子どもたちの純粋な思いを感じられる作品ばかりです。
若手アーティストによる純粋なアート
若手アーティストの中には、美の喜びを表現した作品もありました。
「私の猫」ヴァージニア・グレコさん(11歳)
「私の猫はとても美しいので、描きたいと思いました」とグレコさんはアーティストステイトメントに書いていました。
「エメラルドの宝石」トム・ボウクネグトくん 9歳 水彩画
「水彩画で描かれたエメラルドのジュエリーです。トムは絵を描くことが好きですが、水彩画はその中でも最も難しいものの一つでした。トムは緑の色が好きで、クリスタルが好きで、その美しさに惹かれてこのジュエリーにたどり着きました。この作品を完成させるのに何時間もかかりました!」とアーティストステイトメントに書いているのは、トムくんのお母さんです。
肖像画
高学年の生徒の作品の中には、ルネサンスの頃の作品にインスパイアされたものもありました。
「私と妹」アニー・キングさん 15歳
「これは双子の妹、ホリーと私の絵です。この作品の準備のために、ルネサンス期の作品を研究しました」とキングさんはアーティストステイトメントで書いています。
王の肖像画は、イタリアのルネッサンス期の芸術家たちが好んだ横顔で描かれています。この絵は、イタリア・ルネサンス期に現存する最古の二重肖像画であり、家庭内の様子を描いた最初のものです。
リッピは二人の人物を対面で描いていますが、王様の双子は背中合わせで描かれています。どちらの作品でも、顔の表情には、穏やかな満足感が見られます。「私と妹」は姉妹のアイデンティティを暗示しています。姉妹は学生服を着ています。一人は補聴器をつけているのが見えますが、その他に二人が何者なのか分かるものは描かれていません。
「時間の旅人」レオ・オシポフスさん 18歳
「私のインスピレーションは、カラバギズム運動とキアロスクーロから来ています。私は現代の中にある古典芸術を表現したいと思っています。バロック美術の時代に持っていた人間の情熱を現代社会でも人間はまだ持っています。ルネサンス期の人が持っていたであろう、愛情と嫉妬という主な感情の2つを、この絵の中で表現しているのです」と話してくれました。
カラバギズム運動とは、カラヴァッジョの死後、カラヴァッジョの画風を模倣した17世紀の運動です。カラヴァッジョの信奉者たちは、カラヴァッジョの光と影(キアロスクーロ)を使った自然主義的なスタイルで絵を描いていたことで知られています。彼らは光と影のコントラストを極端に強調するテネブリズムと呼ばれる技法を用いました。デトロイト美術館に展示されているアルテミジア・ジェンティレスキの「ユディトと召使い」は、この技法を使って描かれています。
オシポフの絵では、戸口と思われる部分からの自然光を利用しています。手前の男性の姿は、私たちの時代のものなのか、ルネサンス時代のものなのか分かりません。羽の生えた帽子とマントは、どちらの時代のものなのでしょうか。そこがポイントなのかもしれません。服装や環境は違っても、人間の本質は永遠なものなのです。
ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツのヤング・アーティスト・サマー・ショー・オンライン展については、YoungArtists.RoyalAcademy.org.ukをご覧ください。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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