脳出血を防ぐため「脾臓を守る」 その意味と養生法

中国伝統医学である漢方の考え方によると、五臓六腑でいう五臓のうちの一つ「脾(ひ)」には「水穀を消化し、後天の精や津液、血や営衛などを吸収して全身に送る作用がある」とされています。本稿では、漢方の視点からいう「脾臓」について、その養生の方法も含めて、ご紹介します。

漢方医学における「脾臓」の役割

漢方医学でいう脾は、そのまま「脾臓(ひぞう)」と呼ばれることもありますが、その基本的な概念は、西洋医学の解剖学によるところの脾臓とは異なっています。西洋医学の脾臓は、造血や血液の貯蔵など、主として血液に関する直接的な機能を有します。

これに対し、漢方でいう脾臓は、の機能と合わせて「脾胃」と併称されるように、食事のあと、他の臓器に先駆けて、まず体内に入った食物の消化吸収に当たることが役割になっています。

ただし、消化吸収した栄養分を全身に運ぶのが血液ですので、漢方における脾臓が、血流に深く関わっていることは言うまでもありません。実際、脾臓のもつ役割の一つに「統血(とうけつ)」というのがあります。これは、血液が脈内を順調に回る(血管外に飛び出さない)ようにコントロールする、という重要な役割を指します。

脾臓の状態が悪いと「血が血管から飛び出す」、つまり出血しやすくなります。そこで、血液が血管内を安定的に流れるため、脾臓による「統血」が求められるのです。もしも「脾臓の気」が弱まると、鼻血、血尿、月経時の大量出血、脳出血、胃からの出血など、各種の重大な出血が起こります。

漢方医学において「脾胃は後天の本(もと)」と言われます。つまり、脾臓と胃は(先天的に備わったものではなく)人が生まれた後、つまり後天的に努めて良い状態に保つよう養生してこそ、その機能が十分発揮されるという意味です。

西洋医学にこのような思想は、ありません。そこで改めて脾臓の「統血」を具体的に説明すると、血液中の血小板の役割を統率することを指すのです。

血小板は、血栓細胞とも呼ばれます。普通の血液細胞を馬車に例えると、血小板は馬車をあやつる御者に相当します。血小板の主な役割は、馬車の御者のように血液をコントロールして、むやみに走り回らせないことです。そして脾臓は、全身をめぐる御者たちの「総司令官」ということになります。

温かい食事、ゆっくり噛む、8つの秘訣で脾胃を守る

では、それほど重要な脾臓と胃を、どうやって養生したらよいのでしょうか。
唐突ながら「ご飯の食べ方を知らない人が多いですね」といったら笑い話のようですが、それは事実かも知れません。

健康的な食事とは何かについて、お話ししましょう。例えば「主食は雑穀。野菜や果物を多く食べ、肉は少なめにする」。確かに健康的な食事ではありますが、それが全てではないのです。何でもそのまま食べて、かえって胃潰瘍になってしまった患者さんもいます。

米糠(こめぬか)は、今日のビタミン不足の人にとっては良いものですが、例えば玄米なら、柔らかいお粥になるまで時間をかけて炊かなければ、栄養として吸収されにくく、胃の粘膜を傷つけることもあるのです。

「水を多く飲むと良い」と固く信じている人もいます。もちろん適度な水分補給は必要ですが、飲み過ぎれば「水中毒」になります。水ぶくれで両足がむくみ、腫れあがっていても、自分自身に大量の水を飲むよう強要する、という笑えない話もあります。

脾臓や胃を守る健康的な食事について、以下、8つのポイントをご紹介します。

第一に「温かいもの」を食べてください。冷たいものは、なるべく食べないようにします。食物は、五行でいうところの「木」ですから、調理で火を通し「土」に変えてこそ、脾臓と胃を温めることができます。

生野菜のサラダは冷たすぎますので、加熱して温野菜にするほうがいいのです。果物は午後に食べることをお勧めします。午後に陽気が入ることによって、果物の冷たさを防ぐことができるからです。

第二に、ゆっくり食べてください。よく噛んでこそ、十分に消化できるというものです。

第三に、腹八分目までにすることです。3食のバランスは「朝食はよく食べ、昼食は十分に食べ、夕食は少しだけ食べる」です。

第四に、なるべく定時に食事するようにしてください。本当に空腹になってから食べると、つい一回ごとの量が多くなり、必ず食べ過ぎになります。

第五に、ご自分の「好きなもの」を選択して食べること。とは言っても、健康に良くない嗜好品は含まれません。

第六に、たとえ好きなものでも、そればかりを偏食しないことです。いろいろな食品を、バランスよく食べてください。

第七に、自分が食べたものについて、その後の体調がどうであるか、検証してみてください。インターネット上の情報を完全に信じるのではなく、自分の体に聞いてみるのです。食べてみて、体に良い効果がでているか。よく眠れているか。起床後、体力が回復できているか。翌日の便通はよいか。この4つのポイントをクリアできたら、その食品は合格です。

最後に、第八として、食後に10数分の休憩をとってから、脾臓と胃に十分な血液が届くよう腹部のマッサージを励行してください。

脾臓を健やかにするツボ2種

三里(さんり)

椅子に座り、ひざがしらに手を置いてください。左右どちらでも、手の薬指が当たる位置が三里です。

三里(さんり)のツボ(健康1+1/大紀元)

陰陵泉(いんりょうせん)

ひざの下、すねの内側の、骨がくぼんだ個所にあります。

陰陵泉(いんりょうせん)のツボ(健康1+1/大紀元)

(文・一僧 翻訳編集・鳥飼聡)