多摩川にさらす手作りさらさらになにそこの児のここだかなしき(万葉集)
歌意「多摩川の清流に、さらさらと、さらす手作りの布のように、この娘はどうしてこんなに愛おしいのだろう」。
『万葉集』のなかの東歌(あずまうた)と呼ばれる一群の歌は、東日本の庶民の素朴な生活ぶりを、いきいきと今に伝えています。作者もわからない民謡のような歌ですが、どれもたまらない魅力があります。なかでも名歌として有名なのがこの一首。初夏の明るい日差しの下で、涼やかな目の若者が、愛らしい村娘にうたいかける光景が目に浮かぶようです。
律令時代より、多摩川流域は麻の栽培が盛んであったため、その布が税の一種である「調」に当てられました。現在の調布市の地名に、その名残が見られます。
(聡)
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