もしもあなたが「大変だ。ダイエットしなければ」と思い立ったら、まず何をされますか。

食事の内容を見直すことはいいとしても、主食に多く含まれるデンプン(澱粉)をまるで「不倶戴天の敵」のように思いこみ、「デンプンは絶対に食べない」などの極端に走ったらそれはいけません。健康的で持続可能なダイエットには、デンプン質を適切に摂ることが不可欠なのです。

デンプン質を摂ったほうが、ダイエットに良い

炭水化物には、単糖類であるブドウ糖と、多糖類であるデンプンが含まれています。どちらも人間の体に必要な栄養素ですので、たとえダイエットするにしても、デンプン摂取をゼロにすることは間違った認識であり、ときに危険ですらあります。
「良いデンプンの食材を選んで、適量を食べれば、ダイエット効果が倍増します」。
台湾の栄養士で、食品科学博士でもある陳小薇氏は、デンプンを全く食べないのは正常な代謝メカニズムに反すると指摘します。逆に「適量のデンプンを食べたほうが、ダイエットに効果的である」という考え方は、十分に根拠があると言います。
まず、デンプンを適切に摂ることで、ケトアシドーシスを避けることができます。ケトアシドーシスとは、糖尿病の急性合併症である「糖尿病昏睡」の一つです。喉の乾き、多尿、全身の倦怠感などの症状がみられた後に、急激に発症し、悪化すると呼吸困難や吐き気、嘔吐、腹痛、意識障害などが起こります。

デンプン摂取をやめると、体がケトン体を分解することで腎臓に負担がかかります。さらに、ケトン体が体内に蓄積しすぎるとケトアシドーシスになります。国際的に有名な刊行物、例えば『Lancet.』なども、かつてケトン食療法をしていた非糖尿病患者が、ケトアシドーシスになった病例を報告しています。

ケトン食療法は特定の治療のためにするもの

ケトン食療法とは、デンプン摂取をごく少量にして、主なエネルギー源を油脂にするよう指導する療法で、てんかん患者の治療など特殊な場合に用いられます。これはあくまでも具体的な治療目的があって採用する方法なので、必ず医師や栄養士の指導を受けながら行ってください。個人が、ダイエット目的で行うものではありません。

台北市にある新光病院、内分泌科の主治医である江宜倫氏によると、ケトン食療法を長期間にわたり継続するてんかん患者には、下痢、便秘、吐き気、嘔吐、血脂異常、骨粗鬆症、腎結石などの症状が見られ、また血液検査でも、高尿酸、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症などの異常が出る可能性があるといいます。

重要なことは、間違ったダイエット方法で代謝とホルモンバランスが崩れると、その後のダイエットが非常に難しくなるだけでなく、風邪を引きやすくなるなどの免疫力の低下、不安や不眠などメンタル面への影響、女性の生理周期の混乱が生じるなど、体へのさまざまな悪影響が出るということです。

基礎代謝率を低下させない」が、健康的ダイエットのカギ

デンプンを食べない極端なダイエットは、最初は体に脱水を強いますので、一時的に体重が落ちたような錯覚が生じます。しかし、体内の糖質を消費し尽くすと、次は筋肉を消耗させることになり、体全体の筋肉量が落ちてしまうのです。
「一番怖いのは、筋肉を消耗することです」と栄養士・陳小薇氏も言います。筋肉量が落ちると基礎代謝率が低下し、それだけ食べた食物のカロリーが脂肪として蓄積されやすくなる、つまり肥満のリバウンドとなるのです。
基礎代謝率とは、人が安静状態で消費する最低カロリーです。筋肉量が増えれば基礎代謝率が上がり、食事で摂取したカロリーの燃焼を増加させ、体脂肪の減少に役立ちます。

そこで「きれいに、健康的にやせる」ダイエットには、基礎代謝を維持するために必要な量の炭水化物が欠かせないわけです。
人体には、自己を保護するメカニズムがありますので、極端な食事は「今、飢饉に直面して、飢餓状態にいる」という錯覚を起こさせます。そうすると、なんと自然にカロリーを脂肪にして蓄え、基礎代謝率を自動的に下げてしまうのです。
ここで、体重を減らすダイエットは一度挫折して出発点へもどるのですが、体のほうはと言うと、以前にも増して「何を食べても確実に太る体質」に変わっていることに、多くの人が気づいていません。

運動後に1本のバナナと無糖豆乳、または茶葉卵(茶葉をつかった煮玉子)を食べると、タンパク質と炭水化物を補充することができます。(tomatosoup/photoAC)

運動後、より多くの脂肪を燃焼するために、炭水化物も必要

運動がダイエットに役立つことは間違いありませんが、運動後にタンパク質と炭水化物を補給すると、ダイエット効果がもっと良くなります。運動はブドウ糖を消費しますが、運動後の代謝によって脂肪を燃焼させるために、十分な炭水化物を摂取して代謝活動を促進する必要があるのです。

運動後に摂る栄養として、炭水化物に対する蛋白質の補給比は1:2または1:3であり、全体として300 kcal以内にするのが適切です。例えば、運動後に1本のバナナと無糖豆乳、または茶蛋(茶葉をつかった煮玉子)を食べると、タンパク質と炭水化物を補充することができます。
一方で「楽しく、ダイエットを継続できる方法」も考慮したいものです。甘いものを食べる炭水化物は、確かに精神的な快感をもたらします。
そこで、1週間のうち1日を「快楽の日」に設定し、「その時間に限ってデザートなど好きなものを食べるといい」と栄養士・陳小薇さんは提案します。「お楽しみの部分も少しはOK」ということですね。

サツマイモは栄養豊富であり、さらにレジスタントスターチを多く含むため、ダイエット主食として適しています。(Shutterstock)

 

デンプンを正しく食べるため「主食を選び、分量を計算」

良いデンプンは、非精製の五穀や雑穀、根茎類を含みます。例えば、玄米、エンバク、トウモロコシ、小豆、緑豆、黒豆、サツマイモ、ジャガイモ等。これらの食物には、難消化性のデンプン(レジスタントスターチ)も含まれており、これは満腹感をもたらすとともに、食後の脂質酸化を促進して脂肪の蓄積を減少させる効果があります。

食物の中のレジスタントスターチは、冷ますと増えます。冷たいご飯や冷麺は食べるのが少し辛いですが、焼き芋は冷えても食べるのに適しています。

本当に避けたいデンプンは、パンやお菓子、スイーツなど、「多油、多糖」の食べ物です。これらの食品について陳小薇さんは、「快楽の日の限定で、適量を」と指摘します。

いかがでしょうか。体が健康な状態であってこそ、効果的なダイエットもできるもの。適量を適切に食べて、美しく、楽しく、ダイエットしてみましょう!

(文・蘇冠米 翻訳編集・鳥飼聡)