【未解決ミステリー】失われた発明(一)

ビザンツ帝国の寿命を1000年伸ばしたギリシャ火薬の力

火は水を恐れ、水の前では火はその姿かたちを保っていられません。

しかし、かつてのビザンツ帝国(東ローマ帝国)には、水を恐れず、幾度もの戦いで帝国を守ってきた火薬発明がありました。それが、「ギリシャ火薬」です。

ギリシャ火薬の不思議な働き
 

西暦670年前後、急速に拡大し始めたアラブ帝国は、攻撃的な艦隊を作り上げ、
678年に、ビザンツの首都であるコンスタンティノープルの町を直撃し、この街を
陥落させようとしました。

しかし、この時、ギリシャ火薬が姿を見せ、アラブ帝国の計画が打ち破られてしまった
のです。

6月25日、ビザンツ海軍は、いくつかの小さな船を戦闘に向かわせました。船が艦
隊に近づくと、突然奇妙な炎を発射し、戦艦に命中させ、炎はたちまち燃え広が
りました。そして、海に落ちた火は、消えるどころか、他の戦艦へと蛇(へび)
のように燃え伝わっていったのです。

その結果、アラブ側の戦艦の3分の2が焼失し、アラブ軍は「ジハード」の開始以
来最悪の敗北を喫し、ビザンツ帝国との30年間の和平協定を締結せざるを得ませ
んでした。

火に怯えたアラブ軍は、ビザンツ帝国がギリシャ語を話していたため、この「悪
魔の武器」を「ギリシャ火薬」と呼びました。ビザンツ人は自ら「海の火」と名
付けました。

しかし、ビザンツ帝国は穏やかで親和的な国であり、比較的裕福で、他国を狙っ
たりしませんでした。したがって、ビザンツ皇帝は、不測の事態に備え、ギリ
シャ火薬の調合方法を厳重に保管し、文字の記録さえしなかったといわれていま
す。

その配合は、数年前にガリニコスというシリアの職人がビザンツ皇帝に献
上したと言われており、主成分は当時の小アジア産の石油だといいます。
ギリシャ火薬のおかげで、ビザンツ帝国は千年以上続きました。

しかし、残念なことに、この帝国も永遠に受け継がれていくことはできませんで
した。1453年5月、今度はトルコ人が、射程1マイルのウルバン砲を持ち込みました。無
敵と言われたギリシャ火薬も、大砲の砲撃下で威力を発揮できず、5月29日、ついにコン
スタンティノープルが陥落しました。最後の皇帝であるコンスタンティヌス11世
が戦死し、ビザンツ帝国も滅び、そして、ギリシャ火薬もこの世から消滅しまし
た。

陥落した夜、コンスタンティノープルの貴族や学者は西欧州諸国に亡命していき
ましたが、同時に貴重な古代文献を持ち出したので、プラトンやアリストテレ
ス、アレクサンドリアやシーザーの時代に西欧で失われた古代文明を再現させる
ことができました。言い伝えによると、これらの古代文献がルネサンスの土壌を
育み、数多くの若い巨匠たちがここから栄養を得て、欧州文明の栄光を再び成し
遂げたのです。

(翻訳編集 天野 秀)