おいしい果物は、心ゆたかな生活と健康維持に欠かせない食べ物です。新鮮な果物を食べることに何のタブーもありません。しかし、どんなに良い食品でも、食べるタイミングを誤ると、体にマイナスの影響が出る場合があります。
台湾の扶原中医雲林総院、院長の郭大維氏は「空腹時には、避けたほうがいい果物もあります」と言います。郭氏によると「空腹時に食べないほうが良い果物」は、次の5種類です。
空腹時には避けたい5種類の果物
果物は非常に重要な栄養源ですので、台湾の国民健康署も「1日に、少なくとも2回(1回分は片手のこぶし大)の果物を食べるよう」勧告しています。
多くの人は、ダイエットのために食事の前に果物を食べて、その分、食事の量を控えています。あるいは、果物をおやつにして、お腹がすいた時の空腹感を紛らわす人もいます。しかし、このような食べ方は、かえって体を傷つけるかもしれません。空腹時には避けたい5種類の果物は、次の通りです。
1 甘味の強い果物
ドリアン、ライチ、マンゴー、スイカ、サクランボ、サトウキビ、バナナなど、甘味の強い果物は、食前には食べないほうがいいでしょう。
糖度の高い果物は満腹感をもたらしますので、食事の際に食欲を低下させ、タンパク質など必要な他の栄養素を十分摂取する機会を失ってしまうのです。また、これらの果物を「食事の代わり」に食べても、脂質低下やダイエットにはあまり役に立たないのです。
これらを空腹時に食べると、栄養の消化吸収が比較的速くて直接的であるため、フルクトース(果糖)が体内で更に中性脂肪に転化し、かえってコレステロール値が高くなる場合があります。
例えば、ダイエット中の人は、多くバナナを好んで食べていますが、バナナに含まれる糖分やカロリーは低くはありません。「バナナ2本分のカロリーは、缶ビール1本分くらいに相当します」と郭氏は言います。
カリウムやマグネシウムのイオンも高いため、空腹でバナナを食べると、後頭部がくらくらするなど、体の不調を誘発する可能性があります。ただし、運動前にバナナを食べるのは、運動で代謝が上がりますので全く問題ありません。
甘い果物は胃酸の分泌も刺激します。胃腸の調子がすぐれない時は、さくらんぼを1粒食べただけでも体調が悪くなることがあります。
また、これらの果物はインスリンを大量に分泌させて血糖を下げ、食べた後に眠くなります。空腹時にライチを大量に食べると「ライチ病」を引き起こすこともあるとされています。空腹時の血糖値はもともと低いのですが、ライチをたくさん食べるとインスリンの大量分泌を刺激して、血糖値をさらに低くして低血糖症になります。
症状としては、冷や汗、動悸、脱力などです。重度の低血糖になると、脳神経機能が害され、ときにチックを発します。成人では、内分泌系は安定しており、問題は少ないのですが、高齢者および小児は成人ほど血糖変動に対する耐性が強くないので、低血糖のリスクは高くなります。中国では以前、数十人の児童が空腹のまま大量のライチを食べて「ライチ病」を引き起こし、死亡者も出ています。
(写真2)バナナは糖分、カリウム、マグネシウムが豊富に含まれており、利用価値の高い果物ですが、空腹時には避けるようにしてください。(Shutterstock)
2 酸味のつよい果物
グリーンキウイ、柑橘類、サンザシなどの酸味のつよい果物は、胃酸の分泌を促します。
例えば、サンザシは消化を促進し、気の流れを良くし、うっ血を散らしますので、食後に食べるのに適しています。空腹の状態で食べると、かえって胃酸の分泌を刺激し過ぎて、空腹感を増加させることになります。
3 高タンニンの果物
トマトや柿には、タンニンが含まれているので、美容にはいいのですが、空腹時に食べるとタンニンと胃酸が結合して消化不良を起こし、ひどい場合は胃痛になることもあります。
郭大維氏は「徹夜などで長時間、胃に何も入っておらず、空腹の状態でこれらの果物を食べると、腎臓結石や胆石、胆のう炎などになりやすい」 と話します。
4 シュウ酸の多い果実
楊桃(スターフルーツ)はシュウ酸が多く含まれているため、腎臓病の患者には禁物とされている果物です。しかし、腎機能が正常な人でも、特に空腹時には過度の摂取は避けるべきです。
健常者でも一部の人は、空腹時および脱水状態で大量のシュウ酸を摂取したり、大量のシュウ酸ジュースを飲用したりすると、尿細管に過剰なシュウ酸が蓄積するため、急性腎不全を起こします。
『台湾の家庭医学雑誌』では、一般の人が楊桃を食べる場合は、1回に半分から一個までを限度とし、多めの水分を補給するとともに、長期の食用を避けることを提案しています。
(写真3)空腹時に大量のスターフルーツを食べると、急性腎不全になることがあります。(Shutterstock)
5 冷たい果物
スイカ、ハミウリ、ドラゴンフルーツ、ナシ、ビワなどの果物は、いずれも寒性の果物に属します。漢方医学では「寒は主として引き込む」。つまり寒さや冷たさのため、血管や胃壁が収縮することを指します。
そのため、空腹時に冷えた果物を食べると、胃腸に不調をきたす場合があるのです。郭大維氏は以前、空腹時に、ちょうど奥さんが剥いた梨を少しだけ食べました。ところが食べた直後、腹部に痛みを感じ「おなかが殴られたようだ」となって困った経験があると言います。
果物は、食後に食べましょう
空腹時に果物を食べるならば、リンゴ、グアバ、パパイヤ、ブドウなど「平性の果物」が良いでしょう。
台湾で普及している漢方医学の養生法では、果物を「寒性」「平性」「温熱性」の3性に分類しています。この3性は、それぞれに長所があり、また食用する際の注意点があるのですが、その中の「平性」に属する果物は、空腹時に食べても心配は要りません。
これらの果物はダイエットにも役立ちます。「平性の果物」は繊維質が多いため、甘味の強い果物のように食事に過度な影響を与えず、満腹感が増すことができるからです。
食事の前に果物を食べる場合は、1時間前に食べるのが望ましいとされています。しかし、胃病、糖尿病、腎臓病、心臓病、高血圧などの病気がある場合、全ての果物は、食後に食べることをお勧めします。
一部の果物は、カリウムイオンが高すぎたり、糖分が多すぎたり、胃酸の分泌を促進したりするので、これらの患者に悪影響が出る心配があるからです。
子どもでも、食事の前に果物を食べさせるのは良くありません。後で食事をする時に、子どもは食事をしたくなくなり、体に必要なタンパク質やデンプンを補充できなくなり、発育に悪い影響を及ぼすからです。
郭大維氏は「胃腸が正常な人ならば、空腹時に果物を食べても、大量でなければ構いません」と言います。しかし今は、現代人の多くがストレスを抱えています。消化不良など胃腸の問題も起きやすく、東洋人特有の体質的な要因もあるので、やはり郭氏は「食後に果物を食べることをお勧めします」と最後に付け加えました。
(文・蘇冠米 翻訳編集・鳥飼聡)
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