中国建築上の十の奇跡(三) ―都江堰

運河堰のプロジェクト
 

現在、私たちは歴史的観点から見ると、次のように結論づけるのは難しくない。各国が覇権を争っていた戦国時代に、の軍事力が強くなって中国を統一したことは、歴史の発展法則に従っており、「天意に準ずる」。中国を統一するため、秦は都江堰を築いて天府之国(大穀倉地帯)を手に入れ、霊渠を修築して百越を征服した。正に「天意に従うものが栄える」である。

この二つの施設は、川を分流する単純な原理を採用する。川と地理環境の特徴をうまく利用することで、中国の伝統文化である「天人合一」の領域を実現し、奇跡的な施設を築いた。

世界初、かつ現在も使用されている水利プロジェクト―都江堰

都江堰は四川省都江堰市にあり、成都平原西部の岷江の上流域に位置する。紀元前256年に、戦国時代の秦の蜀郡郡守李冰と彼の息子によって建設された。都江堰は、現在も使用されている水利施設としては世界で最も古く、ダムがない唯一のものだ。

都江堰の主要構造物は魚嘴(分水施設)、宝瓶口(水を引き込む施設)と飛沙堰(洪水調節と砂排除施設)である。主な役割は水を引き込んで、農地の灌漑に利用することであり、洪水調節、排砂、水運、都市供水などの総合的な機能を兼ね備える。今でも40以上の都市、数千平方メートルの農地を灌漑できる。四川省にも「都江堰があってこそ、天府之国になった」という諺がある。

李冰親子は、石をかごに入れて川に沈める方法で堤防を築き、「魚嘴」を修築した。「宝瓶口」は、岩盤を火で温めた後に水で冷やし、岩盤に亀裂が入るまで繰り返しながら、少しずつ岩山を切り崩して建設した。これらの方法であれば火薬がない時代でも簡単にでき、「大道は最もシンプルで、最も分かり易い」という原則を証明している。自然から建築材料を取り、峻険な地形を活かし、地勢の特徴を巧みに利用するという独創的な建築方法こそ、「道法自然」「天人合一」の表れなのである。

(翻訳・編集 千里)