アメリカ・アイオワ州の農場(Mark Hirsch/Getty Images)

米議員、外国人の農地購入禁止法案を提出 中国企業を念頭に

米下院歳出委員会では現在、中国当局とつながりのある企業の米国用地の購入を禁止する法案が審議されていることがわかった。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)26日付によると、米議会は過去10年間、中国企業が米国の大型農場を買収し、米国の農業への影響力を拡大したことに強く懸念している。下院歳出委員会は、現在、農業関連機構への歳出予算法案を審議している。法案には、中国当局の管理を受ける企業が米国の農地の取得を禁じるとの内容が盛り込まれた。

法案では、米国の農地を保有する中国企業は、連邦政府の農業助成金の支払い対象から除外された。同法案は今後、上院と下院での採択を受ける必要がある。

米国の農地とは、10エーカー以上の広さを持つ区画、または農業活動から1000ドルの収入を得ることができる区画と定義されている。

VOAによれば、2013年、中国食肉加工大手の双匯集団は米同業のスミスフィールド・フーズ(Smithfield Foods)を買収した際、米国の農地14万6000エーカーを取得した。20年初めの時点で、中国企業は米国の農地を約19万2000エーカー保有している。金額にすれば、18億5800万米ドルに相当するという。

米議員らは中国当局が海外で農業分野への投資を急拡大していることに懸念を強めた。 米農務省の2018年の調査では、中国の海外農業への投資は2009年から10倍以上に増加した。

中国企業による米国の農地購入を禁止する法案を提出したのは、共和党のダン・ニューハウス(Dan Newhouse)下院議員だ。同議員は、中国企業に対して米国の農地の購入を禁止し、米農務省の補助金を受けられないようにすることは、「アメリカの食品サプライチェーンの安全性と独立性を確保するための一歩だ」と述べた。

チャック・グラスリー(Chuck Grassley)上院議員は、農業と食糧生産は米国の国家安全保障に関わる問題であるとVOAに語った。

マイク・ペンス前副大統領はこのほど、ヘリテージ財団で行った講演で、「米国は、中国がわれわれの食糧供給を支配することを許してはいけない」と話した。ペンス氏はバイデン政権と議会に対して、外国人の所有地に対する農業補助金を直ちに停止するよう求めた。

アイオワ州出身のグラスリー上院議員は、同州は外国人が所有できる土地の規模に制限を設けていると示した。州の法律は、住民ではない外国人が農業を目的としてアイオワ州の農地を購入することはできないと定めている。

民主党のエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は、米国はアイオワ州のように、外国人が米国の農地を所有することを禁止する連邦法を制定する必要がある、と以前から主張していた。

現在、米国各州の中に、外国人による農地所有を禁止しているのは6州だけだ。アイオワ州の他に、ハワイ州、ミネソタ州、ミシシッピ州、ノースダコタ州、オクラホマ州となっている。

農業従事者団体、ファミリー・ファーム・アクション(Family Farm Action)は長い間、米政府に対して、外国企業などによる農地購入を禁じるよう呼びかけてきた。同団体の代表を務めるジョー・マクスウェル(Joe Maxwell)元ミズーリ州副知事は、「外国人や外国企業はいつも市場価格より高い値段で農地を購入している。その結果、土地価格は人為的に押し上げられ、米国の若者による土地取得が難しくなっている」と話し、若い農業従事者らの権利が奪われたと批判した。

また、同氏は、米中関係が悪化している中で、外国の競争相手が米国の中心地に土地を持つことは、米国にとって安保上の大きな脅威となっていると指摘した。

「彼らは、これらの畑を休ませて何も植えないことにするかもしれない。農業生産を行わないことで土地に雑草が生え、地価が下がり、政府の税収も減るのだ」 

「これは国家安全保障上の問題だ」とマクスウェル氏は強調した。 

(翻訳編集・張哲)

関連記事
「孔子学院?新華社?こんなものはもう退屈だろう。中国が本当に世界的なソフトパワー拡大には、モバイルゲームに焦点を当てるべきだ」中国国内メディアは最近、100億米ドル規模に達している中国ゲームの影響力の高まりに自信を見せている。当局は、ゲームコンテンツを通じて中国文化の浸透工作や、親共産主義人物の人気獲得を促進したりしている。
日本料理の「五味五色」が生む健康の秘密。陰陽五行に基づく養生観が、日本人の長寿とバランスの取れた食文化を支えています。
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。