【古典の味わい】貞観政要 3

太宗のその言葉を受けて、側近の魏徴(ぎちょう)が、太宗にこう申し上げた。

「陛下。昔の人は、国の初めはおよそ善政をなすものであるが、それを持続して最後まで全うできるものは少ない、と言っております」。

「どうぞ陛下が、ただいま申されました通り、常に謙虚にふるまい、ご自身を戒めて善政に努められましたならば、わが大帝国は永久に堅固で、決して傾くことはないと臣(しん)は信じております」。

「古(いにしえ)の帝王である堯(ぎょう)や舜(しゅん)の御代が、あれほど天下太平であったのは、まさしくこの法を用いたからでございます」。


ここに現れた魏徴(580~643)という人物を、ご記憶にとどめておいてください。

魏徴は、諫義大夫(かんぎたいふ)という「皇帝に対し諫言する役目」です。

皇帝に過ちがあったとき、直言をもってお諌めするのがその使命ですが、これが実に大変なことで、もしも皇帝の逆鱗に触れて怒りをかえば即刻死罪にもなる、まさに命懸けの職務なのです。

太宗は、魏徴の率直さを見込んで、自ら選んで諫義大夫に抜擢しました。実際、魏徴による太宗への諫言は200回にも及び、しかもその言葉は太宗にとって誠に耳の痛い、辛辣なものだったのですが、太宗はよくこれを受け入れ、自らの過ちを改めました。

そのあと太宗は必ず、自身へ厳しく諫言した魏徴に「よくぞ申してくれた」と謝意を表したのです。

太宗魏徴。その堅固な君臣関係は、上述の『貞観政要』にも見られる通り、の国家繁栄の一助になったことは間違いないようです。

(聡)