「ワクチン2回接種でも感染は防げない」その原因と対策は

デルタ株といわれる変異ウイルスが、世界的に猛威を振るっています。

このデルタ株は感染力が非常に強いといわれており、2回のワクチン接種を終えた人に対しても(重症化するか否かは別として)感染については「完全に防ぐことはできない」ことがすでに広く知られています。

 

マサチューセッツでの感染拡大「74%が2回接種済み」

米マサチューセッツ州バーンスタブルで、大型の集会など夏のイベントが複数行われましたが、そこで感染が爆発し、8月初めまでに469人の感染が確認されています。この地域の住民のワクチン接種率は69%でした。

先週のCDC(アメリカ疾病予防センター)の報告によると、確認された469人のうち74%に当たる346人が、現地のワクチン接種率を超えて、2回のワクチン接種を完了していたのです。彼らは、ファイザー製ワクチンまたはモデルナ製ワクチンを2回接種し、しかも接種後14日以上経過していました。

しかも、ここでの感染者のうち89%がデルタ株による感染であることが判明しています。また、ワクチンを接種した感染者のうち79%に症状が現れました。入院した5人のうち4人は、2回のワクチン接種を完了しています。現在のところ死亡例はありません。

 

ワクチン接種済みでも、感染を避けることはできない

驚いたことに、ワクチンを2回接種して感染した人の核酸検査Ct値は、ワクチン未接種または接種状況不明者のCt値に近いことが分かりました。つまりワクチンを接種して感染した人も、未接種で感染した人も、感染力の強弱を表す数値はほとんど変わらなかったのです。
ワクチンを2回、確実に接種したはずの人が、なぜデルタ株に感染してしまい、さらにその人から他者へ感染させる力がこれほど強いのでしょうか。

CDCのローチェル・ワレンスキー所長は、『ニューヨークタイムズ』に「ワクチンを2回接種した人は、デルタ株ウイルスに感染すると、鼻やのどで大量のウイルスを増殖させることになる」と説明しています。

通常ワクチンは肩の筋肉に注射されますので、誘導される抗体は血液中に残っていることが多いと考えられます。そのうち、少数の抗体が鼻やのどに到達する可能性がありますが、デルタ株ウイルスに対する抗体の量は、それでは不十分なのです。
ここで想起したいのは、人類が生まれつき持っている天然の免疫力との関係です。

ヨーロッパウイルス学及び伝染病専門家でバイオテクノロジー会社の首席科学者である董宇紅博士によると、「粘膜上皮細胞が産生するインターフェロンは上皮細胞を強大にし、全体的な抗ウイルス状態にさせる」といいます。

この天然の抗ウイルス力(免疫力)は、ワクチンの投与によって生じるものではありません。人間が本来もつ免疫力と、ワクチンによる人工的な免疫力とは、関係がないのです。

 

マスク着用」など対策は継続するべき

7月29日、CDCは内部報告で、ヒトの新型コロナウイルス(中共ウイルス)に対する「戦局」が変化したことを指摘しました。そこには「ワクチンを接種した人でもウイルスを他者へ伝播できる」ことが含まれます。
このレポートの主なポイントは、次の4つです。

「デルタ株は感染力が強い」「デルタ株の病原性は増加する可能性がある」「ワクチン接種後に感染した人は、ワクチン未接種の感染者と同等の感染力を持っている可能性がある」「ワクチンは重症化を90%予防できるが、デルタ株の感染を予防する力は弱くなる」。
同報告書によると、デルタ株ウイルスは水疱瘡のように伝わりやすく、過去のほとんどのウイルスよりも伝染力が強いといいます。

これは、ワクチンを2回接種しても感染の可能性はあり、ワクチン未接種の人と同じように感染力があるということで、自身が「無症状の感染拡大者」になることも考えられます。
昨今は、ワクチン接種が進んだとされる国や地域で、人々は開放的になって、マスクを外し、友人らと楽しく会食するなど、くつろいだ風景も見られます。

コロンビア大学の疫学者ジェフリー・シャーマン氏は、米紙『ニューヨークタイムズ』のなかで「ワクチンを接種して安心している人は、自身がデルタ株の普及に大きく関わっている可能性がある」と指摘しています。
米CDCは、予防接種を受けた人を含む全ての人に対して、感染率の高い地域の屋内公共施設への入室時には、今もマスクの着用を推奨しています。

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)