漢方女医から日本の皆様へ「今日からできるアンチエイジング」

朝のお出かけ前、鏡に向かったら「えっ、いつの間に?」。

くすんだ肌の色、小じわ白髪シミたるみほうれい線等々。

頼んでもいないものが鏡の中の自分に現れると、実年齢よりも老けたように見えます。

台北市にある上璽中医学医院の院長で女医の余雅雯さんによると、こうした老化の症状は「脾胃(脾臓と胃)の機能低下、および腎気の衰えと関係があり、主な原因は良くない生活習慣にあります」とのこと。

例えば、食事をきちんととらない、あるいは栄養バランスの良くない不健康な食事が続くなどは、胃腸にダメージを与え、顔をくすんだ土色にしてしまいます。

そうならないために、「今日から始められるアンチエイジングの方法を三つ」ご紹介します。

第一に、睡眠を大切にすることです。

夜更かしや睡眠不足は、腎気虚(腎臓の気が十分でない状態)を招くため、漢方でいう「腎臓に関係がある頭髪」に影響を与えて、脱毛したり白髪になりやすくなります。

余雅雯さんは、きちんと睡眠をとることの重要性を挙げた上で、「午後11時までに就寝してほしいですね」と言います。

漢方医学の視点からすると、午後11時から午前1時までは「胆の解毒」の時間。

午前1時から3時までは「肝の排毒」の時間だそうで、それぞれ、体内の毒素を消去するために必要な時間なのだそうです。

そこに良質の睡眠を合わせることが大切で、夜更かししたり、徹夜をしたりすると、体内の老廃物が翌日に残ってしまうのです。

第二に、規則正しく、内容の良い食事をとることです。

人間の体は、十分な気血(きけつ)があってこそ、栄養を全身にもたらします。

それが皮膚の代謝を正常に保ち、老廃した角質の堆積を避け、光沢のある皮膚を養います。

気血は健康な脾臓と胃に依存するため、栄養バランスのとれた食事とともに、規則正しい食習慣が重要とされるのです。

食べるものは、可能な限り市販の加工食品ではなく、素材をご自身で調理したものにしてください。

加工食品は体に負担をかけ、肌のつやに影響します。
冷たい飲み物は体の温度を下げますので、代謝機能まで低下させて肌を暗くします。

皮膚は通常、28日間に一度代謝されます。

代謝が遅くなって周期が長くなると、古い角質が蓄積して顔色に反映されることになります。

主食を抜かず、きちんと食べることも不可欠です。

五穀や雑穀を食べないと脾胃の機能にマイナスの影響を与え、とくに脾虚(脾臓の気が弱まる)になると顔の筋肉が緩んで、小じわが出やすくなります。

余雅雯さんも「私はいつもご飯を主食にしています」と話しています。

そのほか、黄色、黒色、赤色の食物を多く食べることを心がけてみてください。

これらは漢方医学の基本的な考え方で、それぞれの色をもつ食物が、脾胃、腎臓、心臓血管に有益であるとされます。

黄色い食べ物は、胃に入り、脾臓と胃を元気づけます。ご飯、蓮の実、カボチャ、サツマイモ、トウモロコシなどがそれです。

黒い食べものは、腎臓に入って気を充実させます。

黒ゴマ、黒豆、黒米、黒ナツメ、クロキクラゲ、烏骨鶏、ブルーベリーなどアントシアニンが多い食べものなどです。

赤い食べものは、その色のように、心臓と血管に直接はたらきかけます。

トマト、赤いリンゴ、ニンジン、小豆、クコ、赤いナツメ、サンザシ、イチゴ、サクランボ、洛神花(ローゼル)などがその代表です。

余雅雯さんは、「ビタミンA (例:ニンジン)、ビタミンC(例:イチゴ)、ビタミンE(例:黒ゴマ)を意識した食事をとることが、顔をふくむ表皮の修復、再生にとても有益です」といいます。

鶏の胸肉などは良質なタンパク質ですので、比較的多く食べることもできます。

歴史上、自身の養生法で名を馳せた西太后は、肉を食べるだけでなく、ナッツ類も重視して、特にくるみを好んで食べました。余雅雯さんは「くるみはビタミンEを含む、良い脂質の食品です」といいます。

毎回の食事は「生理時計」に沿ってきちんととり、特に朝食抜きは避けましょう。

午前7時から9時までが「胃経」の運行時間で、この時間に朝食をとると胃経のエネルギー摂取がスムーズに始まるので、基礎代謝率をアップさせることができます。

昼の11時から1時まで、あるいは1時から3時までは、どちらの時間帯も昼食に適しています。

夕食は、午後5時から7時までが、心身ともにリラックスでき、家族と食事を楽しむのに最適の時間です。

第三に、これからご紹介する「顔を養うツボ」のマッサージを毎日やってみてください。

漢方医学ではツボを「穴(けつ)」と言います。

特定のツボを指圧することによって経絡を通じさせ、気血の運行が促進されます。

皮膚の正常な機能を維持することが老化を遅らせ、美容効果にも通じるのです。

余雅雯さんは、自分でツボに鍼灸を施しますが、一般の方は指でツボマッサージをするだけでも効果があります。

指圧の方法は、それぞれのツボを指で10回ずつ、わずかに痛いくらいに押すだけで結構です。

まずは、手と足の2つのツボ、合谷(ごうこく)と足三里(あしさんり)から始めましょう。

全身の気血のめぐりが良くなって、顔色を明るくしてくれます

合谷穴は手骨の親指と人差し指の間の、人差指側にある凹部です。

足三里穴は外膝のやや下に位置します。

次は、目の周りのツボです。

目元のシワを改善し、両目を明るく元気にします。

目の周りのツボには晴明穴、竹穴、魚腰穴、笹穴、瞳穴、四白穴、太陽穴などがあります。

これらのツボは、とくに押す順番は決まっていません。いずれも、目を輝かせ、目の周囲のたるみを取るのに効果があります。

次に、ほうれい線の改善に効くツボです。

承泣穴、四白穴、巨髎穴などのツボを刺激することで、顔の筋肉をひきしめて、たるみや垂れを改善できます。

これらのツボは胃腸機能を盛んにしますので、栄養の吸収と代謝にも良い効果を現し、顔や肌に潤いとつやを与えます。

顔面のほうれい線の改善には承泣穴、四白穴、巨髎穴などのツボが効果的です。

口元のツボには承漿穴、地倉穴などがあります。

これらのツボは大腸に通過しているため、これを刺激すると体内の毒素が順調に排出されるようになります。

その結果として、顔にしみニキビができにくくなります。

承漿穴、地倉穴をマッサージすることで、大腸のはたらきを活発にして、体内の毒素を排出します。

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)