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古医が説く「うがいの効能」虫歯予防から全身の健康へ

うがい」というと、皆様の日本では主に、水をふくみ、鳥の鵜のように上を向いて喉をガラガラ洗うことを指すそうですが、本記事では、上を向かず「口を漱(すす)ぐこと」をそのように称します。

前漢の初期に、淳于意(じゅんう い)という医者がいました。淳于意は、その役職から「太倉公」とも呼ばれました。

司馬遷史記』の「扁鵲倉公列伝」によると、斉国の中大夫(官位名、きゅうたいふ)であった人が、ひどい齲歯(虫歯)を患っていたので、淳于意が鍼灸を施術し、生薬の苦参湯で口内をうがいさせたところ数日で齲歯が治ったといいます。

治療した淳于意によると、中大夫の病因は、風邪にかかったことと、毎食後に「うがいをしなかったため」と記されています。

現代の漢方医である私(鄭正梁)も、口腔内の清潔を保つことは全身の健康維持につながるので、「うがい」は不可欠であると考えています。

中国の古典で、四書五経の一つである『礼記』には「鶏が鳴き始めたら、盥(たらい)に塩を入れて洗う」とあり、そこにはうがいも含めた洗面の所作が記載されています。

また、隋の巣元方(そうげんほう)による『諸病源候論』のなかに「食べ終わったら、口を数回すすげば、虫歯にならない」という話が出ています。うがいは、虫歯予防の一つとして重要であることが、古くから認識されていたのです。

昔の人は、口を漱ぐとき、塩水、茶、蒸留酒、生薬を煎じた湯などを使っていました。
最も強い生薬は、すさまじい苦味のある苦参湯です。苦参(クララ)には殺虫や殺菌の効果がありますので、口腔を消毒することはできますが、お腹のなかに飲み込んではいけません。

塩水も、安価で作りやすく、良いマウスウォッシュです。唐代の名医である孫思邈(そんしばく)は医学総論『備急千金要方』の中で、「毎朝、一つまみの塩を口に入れ、温水をふくんで歯を清掃すれば、歯は即ち堅固になる」と述べています。

歯の健康を保つため。うがいは毎食後、すぐに行ってください。
市販のマウスウォッシュは、口内の爽快感もあり、プラークコントロールや歯肉炎の予防に効果的なのですが、消炎殺菌成分が含まれているものもあるので、お腹の中に飲みこまないようにしてください。

それと、一つだけ注意点を申しますと、市販のマウスウォッシュを使いすぎると、口内の正常な細菌叢のバランスを崩すことにもなります。あまりに過剰な消毒剤の使用は、口内環境をかえって悪くする場合もあるのです。

もちろん、マウスウォッシュは補助的なものです。まずは歯ブラシやデンタルフロスを正しく使って、お口の中を爽やかに保つことが虫歯の予防になり、全身の健康に役立ちます。
(文・鄭正梁/翻訳編集・鳥飼聡)