「赤ちゃんが、乗り物のなかで大泣き」皆さんなら、どうしますか?

米国のタレント、ジェン・フルウィラーは、テキサス州オースティンの出身。日本でいうピン芸人さんで、元気いっぱいのワンマンショーを披露しています。そんな彼女は、なんと6人の子供をもつお母さん。今年、下の子は6歳、上は18歳だそうです。

機内で泣く子供に疲れて「親まで涙」

ジェンはかつて幼い子供たちを連れて飛行機に乗ったとき、他の乗客から向けられた「冷たい視線や睨みつけ、ため息や不機嫌そうな様子が忘れられない」といいます。

「あれは何年前だったかしら。オースティンからアトランタに向かう飛行機のなかで、私は、あらゆる手を尽くして子供たちをおとなしくさせようとしたの。だけど、胸に抱いた乳児はずっと泣いていたし、2歳の子供は動き回って、じっと座っていられなかったわ」

そのとき、同乗していた多くの乗客は親切でしたが、ある女性客は「子供を連れてくるべきではない」と言いたげに、ジェンを睨みつけたといいます。その圧力にへとへとになったジェンは、最後に機内ですすり泣きしてしまったそうです。

向けるのは「冷たい目」か「柔らかな微笑」か

つい最近、ジェンは飛行機でサウスカロライナ州チャールストンへ行く機会がありました。このとき、自分の子供は連れていませんでしたが、隣の席の女性が赤ちゃんを連れた若いお母さんで、しかも赤ちゃんはずっと泣いていたのです。

ハードなスケジュールのなかで昨晩もほとんど寝ていないため、飛行機に乗ったら仮眠をとるつもりだったジェンは、はじめ赤ちゃんの泣き声を迷惑としか思えませんでした。

「でも、私は努めて、そう思わないようにしたの。私は、自分が望む世界を実現させるには、まず自分の考えを変えることから始める、という言葉を念じ続けたのよ」

そしてジェンは、隣で申し訳なさそうにしている若いお母さんに、柔らかな微笑を送るとともに、隣で赤ちゃんが泣くことを優雅に受け入れました。その話の最後を「あのお母さんは何も間違っていません」と締めくくり、SNSに投稿しました。

ジェンの投稿は大きな反響を呼んで、同じ経験や悩みをもつママたちから支持と共感が寄せられました。

赤ちゃんの泣き声は「神様の祝福」

ジェンは、こう言います。

「もしもあなたが、赤ちゃんを連れて飛行機に乗り、その子が泣き止まないときは、周りの乗客に『申し訳ありません。ご存知のように、昔から赤ちゃんの泣き声は豊かさの象徴であり、神様の祝福と考える文化がありました。ただ、残念ながら、愚かなポストモダニズムは、時として赤ちゃんを迷惑な存在とみているのです』と言って、少し時間をとるようになさるといいでしょう」

一方、確かに一部の乗客にとっては、赤ちゃんの泣き声が「耳障りだ」と感じられる場合があることも事実です。その際、もちろん赤ちゃんが責められることはありませんが、連れてきた親や保護者に冷たい目が向けられるかもしれません。

また(もう泣きはしませんが)活発に動くようになった幼児の場合も、同様のことが起きると考えられます。

「女性がレストランや教会、飛行機などの公共の場所に乳幼児を連れて行くのは望ましくない。連れて行くなら、おとなしくさせないといけない」という意見は、一面においては「正論」なのでしょうが、女性(母親)に負荷が偏重していたり、そもそも「乳幼児はそういうものである」という視点が、だいぶ摩耗していようにも見えます。

運転士「子供は泣くのが仕事です。一緒に乗せていって」

乗ったものが飛行機であれば「途中下車」というわけにはいきませんが、もしもバスや電車であったなら、どうでしょうか。
先日、こんな物語の動画をネット上で見かけましたので、ちょっとご紹介しましょう。

場所は東京都内。新宿駅へ向かう公共バスの車内でのことです。バスはかなり混んでいて、その息苦しさのためか、あるいは驚いてしまったのか、若いお母さんに抱かれた赤ちゃんが激しく泣き始めました。

新宿駅ではないバス停に着いたとき、後ろの方から「すみません。降ります」と言って、その若いお母さんが人混みをかき分けて、前の降車口へ来ました。

運転士さんが、ふと気になったのか、そのお母さんに「どちらまで、行かれるのですか」と聞きます。

「新宿駅まで行きたいのですが、子供が泣いて、ほかのお客さんの迷惑になっていますから、ここで降ります」

「いや、新宿駅までは遠いですから、歩いては行かれません。このままバスに乗ってください」

運転士さんは、さっと車内放送のマイクを取り、次のようにアナウンスしました。

「皆さん。このお母さんは新宿駅まで行きたいのですが、子供さんが泣くので、ここで降りると言われています。子供は泣くのが仕事です。どうか皆さん、このまま新宿駅まで、お母さんと赤ちゃんを乗せていくことに、ご了解いただけませんか」

一瞬の間をおいて車内に響きわたったのは、乗客全員による「賛同の拍手」でした。

若いお母さんと泣く赤ちゃんを乗せたまま、満員のバスは新宿駅へ向かいました。

(翻訳編集・鳥飼聡)