ブドウの旬は、夏から秋ですね。
とは言っても、今は輸入ものの果物が年間を通して入ってきますので、店頭にブドウの「顔」を見ない時季はないのかもしれません。
ブドウは、その豊富な栄養分をすべて活かすために、ぜひ皮ごと食べてください。
ブドウに含まれるビタミンB 1は、糖類の代謝を助け、胃腸を正常に動かして、腸の通じをよくします。実際、ブドウは栄養が豊富で、ビタミンB 1のほか、B 2、C、P、カロティン、タンパク質、アミノ酸、カルシウム、カリウム、リン、鉄など、多種の栄養素やミネラルを含み、その総合的な抗酸化作用は果物の中でも突出しています。
また、天然の甘味であるブドウ糖やフルクトース(果糖)が多く含まれているため、体に吸収されやすく、すぐにエネルギーに変換されるので、疲労回復にも役立ちます。
そんなブドウは、やはり皮ごと食べるのが最良と言えます。
ブドウの皮に含まれる豊富なシアニジンは抗酸化成分で、皮膚、目、血管を保護すると言われています。ブドウの皮が食べ慣れない人は、皮ごとジューサーにかけてスムージーにしてはいかがでしょう。さらに無糖ヨーグルトを加えると、ブドウの甘味とヨーグルトの酸味がほどよくマッチして、実においしい健康飲料になります。
さて、そのブドウですが、ちょっと昔の昭和時代の中期までは、デラウエアという種類の小粒の種なしブドウが主流で、銀座のデパートは別として、町の果物屋さんにはそればかり並んでいたように思います。
そう言えば、白熱電球の光に照らされて、黄色が目に鮮やかな台湾バナナは「風邪をひいた時にしか食べられない」と言われました。確かに、日本の桃や柿よりも上段の棚に置かれて、高級品あつかいされていましたね。
そんな時代(50年くらい前)の日本人はというと、ブドウ(デラウエア)の皮を食べずに、果肉だけを飲みこんで、皮は口から出して捨てていました。
当時どこかで聞いた覚えのある「ブドウの皮や種をのむと盲腸になる」というのは、もちろん迷信で、本当に信じていたわけでもないのですが、多くの人はブドウの皮を食べていませんでした。ブドウの皮も、ミカンの皮(内皮)も「食べない部分」と見なされていたのです。
昭和40年代の後半から「巨峰」という大粒のブドウが、栽培方法が確立されたこともあって、一般に出回るようになりました。これも高級品だったので、子供は一粒もらって食べるだけでしたが、やはり「手で皮をむいて」中身だけ食べていました。味は格別ですが、指先が紫色になります。
あれから半世紀が下った令和の今。シャインマスカットなどといった、見た目にも洗練された品種が「皮ごと食べるブドウ」として店先に並びます。まことに結構な時代になったものです。
お店で購入してきたブドウは、流水でさっと洗って、小さいゴミや汚れなどを流してからフルーツ皿に盛ります。ただ、コロナの新規感染者数が減少してきたように見受けられる昨今ですが、食べる前の手洗いなどの励行は、まだまだ油断なく続けましょう。
買ってきた野菜や果物を「必ず中性洗剤で洗うように」と厚生省(当時)から言われたのは、やはり昭和の中頃のことでした。そのときには、まだ流通での衛生環境も整っていなかったことに加えて、残留農薬や寄生虫(とくに回虫)の心配が大きく取り上げられていたせいもあります。
ただ、昭和37年(1962)に、ある台所用中性洗剤の誤飲による死亡事故が起きてから、家庭で日常的に使われる洗剤についても、求められる安全性の基準が高くなりました。
現在、生鮮食品を洗浄する洗剤の安全性は、使用法が適切であれば、十分であろうかと思われます。
ブドウを皮ごと食べる前に、洗剤をつかって念入りに洗うか否かは、皆様のご判断にお任せします。要は、おいしく、楽しく、天の恵みに感謝していただくことですね。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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