睡眠に影響を与える原因はたくさんあり、その中には就寝前の良くない習慣も含まれています。眠りにつけない、あるいは深く眠れないなどでお困りでしたら、その原因が自身の生活の中にあるかもしれません。
7つの「就寝前の悪い癖」
1、寝る前に「スマホ・携帯を長時間見る」
寝る前に携帯電話(スマートフォン)でニュースを見たり、チャットをしたり、ゲームをしたりすると「元気が出てしまい」眠れなくなります。
インドの学者らは、就寝前にスマホを長く使う(2時間以上)と、全体的な睡眠時間が減るとともに、睡眠の質も落ちるという研究結果を発表しています。
寝る前に携帯電話を見て眠れない原因は、携帯電話のスクリーンの青い光と関係があるかもしれません。韓国の学者らは、夜間にスマホの青い光を見続けた被験者は眠気を感じにくくなり、睡眠の質に影響を与えることを明らかにしました。また、学生が寝る前に携帯電話を見ると学業成績に影響を及ぼすという研究もあります。
2、寝る前に「食べ過ぎる」
睡眠の役割は疲労をやわらげ、体の各器官を休ませることです。寝る前に何かを食べると消化器系に負担がかかり、睡眠に確実に影響します。
ブラジルの研究者らは、52人の健康な被験者に、寝る前の食事と睡眠の関係を報告してもらい分析しました。その結果、男女を問わず、就寝前の飲食は睡眠に対してマイナスの影響があることが判りました。
トルコでの同様の研究によると、寝る前に消化の悪い食べ物を食べた人は、睡眠の位相(時間帯)、睡眠の質、睡眠の長さ、いずれについてもマイナスの影響があることが示されました。
仕事の都合で、時々残業をする人もいるでしょう。どうしても夜遅い時間に食事をとる場合は、緑色野菜や消化しやすい食べ物を選び、消化器系に大きな負担をかけないよう工夫してください。
3、寝る前に「強い酒、大量の酒を飲む」
飲酒したあとの睡眠は、レム睡眠期(急速眼球運動期)が中断され、早く目が覚めやすくなります。アメリカの研究者が11,905名について分析したところ、強い酒を大量に飲む人は睡眠時無呼吸症候群、それによる睡眠不足などが多いことを発見しています。
しかしビールやワインは、適量であれば、睡眠に目立った影響を与えないことが指摘されています。これには、ビールやワインに含まれる微量のメラトニンが関係している可能性があります。研究により、メラトニンは睡眠を促進する以外に、抗酸化、抗腫瘍、免疫力の調整、神経の保護などの作用もあるとされています。
4、寝る前に「カフェイン飲料を飲む」
カフェインは中枢神経を興奮させ、一時的に眠気を覚ます効果があるため、寝る前にコーヒーやお茶を飲むと眠りにくくなります。
米国のある研究では、就寝6時間前にコーヒー(カフェイン400 mg入り)を飲むと、睡眠へのマイナスの影響が十分にあると言います。毎日のコーヒーの飲み過ぎは、睡眠時間の短縮にもつながるという研究もあります。
5、照明をつけたまま寝る
メラトニンは生体リズムを調節するホルモンで、人の睡眠に関係しています。
しかし、ヒトのメラトニン分泌は光によって抑制されやすい性質があります。光が血中メラトニン濃度を抑制し、わずか15分の光刺激でもメラトニン分泌を抑制されることが明らかにされています。180ルーメンの微細な光だけでも、人間の睡眠リズムを変えるのに十分な量だという研究結果もあります。
そのため夜間であっても、就寝中は光を避けるべきです。もし、窓の外の街灯が明るすぎたら、遮光効果の高いカーテンを選ぶようにしましょう。
6、寝る前に「仮眠をとる」
夜の仮眠は、本来の睡眠時間に近すぎて、眠るべき時に眠れなくなるものです。
しかし昼の仮眠(午睡)は、夜の睡眠に有益であると言われています。2017年の研究によると、午睡の習慣がない人は睡眠障害の症状が出やすく、寝付きが悪い、あるいは早く目が覚めるなどと指摘されています。
別のイギリスの研究でも、午睡の習慣がある人は、不眠症になることが少ないことがわかりました。
7、夜更かしする
現代人は、職種によっては已むを得ず徹夜したり、頻繁に残業したりすることもあります。ただ、仕事を離れた生活のなかで夜更かしすることは、睡眠の正常なリズムを乱すことにもなりますのでお薦めできません。
パソコンやスマホで、ドラマを追いかけたり、ゲームに熱中したりして、つい夜更かしする人は多いものです。ある研究によると、青少年の遅すぎる睡眠は、ある種の体の不調と相関関係があると言います。体の不調とは頭痛、胃痛、背中の痛み、めまいなどを含みます。
また一部の研究によると、夜遅く寝る習慣のある人には、タバコを吸う、甘味のつよい炭酸飲料を毎日飲む、パソコンやスマホを長時間見る、野菜をあまり食べない等の良くない生活が繰り返される傾向があるといいます。
就寝前に運動すると眠れなくなりますか?
就寝前の運動が睡眠に役立つかどうかについては、諸説あります。就寝前の運動は交感神経を刺激し、入眠に困難をもたらすと言われる一方、適度な運動は緊張を和らげ、睡眠を改善するという見方もあります。
米国のある研究者は12人の被験者を募集し、毎日就寝の2時間前にルームランナーで30分間走り、15分間の負荷運動をしてもらい、睡眠ポリグラフと睡眠アンケートをとって分析しました。数日おいて、寝る前に運動の代わりに読書をしてもらい、同じように分析を試みました。
結果、それぞれのデータをみると、総体的に運動による睡眠への影響に大きな差はなかったものの、なかには運動後の睡眠状態が悪くなった人がいたことも指摘されています。
別のオーストラリアの研究によると、寝る前の運動および運動後の冷水浴は、睡眠に影響しないことが分かったと言います。アメリカの2013年の研究でも、睡眠前の運動は不眠症には関係しないという結論が出ています。
以上の研究を総合すると、睡眠に影響しない前提で、ウォーキングなどの軽度な運動を夜間に行うことは、消化を助けるだけでなく、心身の緊張を緩和しますので、お薦めできる方法でしょう。
良質の睡眠は、健康の基本です。私たちは生活のなかから、そのマイナスとなる要因を取り除いていくことが求められます。
(文・李永勝/翻訳編集・鳥飼聡)
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