アメリカの科学者は、気温が25度以下になると、太陽の熱が素材を通じて室内に伝わる、新しい屋根用の塗料を開発しました。 また25度以上では、熱を空気中に発散させ、家の中を涼しく保つことができます。
この研究成果は、12月16日付の科学雑誌『Science』に掲載されました。研究者たちは、今年特許を申請する予定です。
この素材の主成分は、二酸化バナジウムです。二酸化バナジウムは、熱伝導率が非常に低い金属で、断熱材に適しています。この化合物は、常温では赤外線は素通りしますが、熱が約67度に達すると性質が逆転し、赤外線を反射するという性質があります。
しかし、屋根が67度に達しないと熱を遮らないので暑すぎます。そこで研究者たちは、素材が性質を逆転させる臨界温度を下げる方法を探すことになりました。
そして研究チームは、ドーピング技術により、素材にタングステンを加えることで、この効果が得られるのを発見しました。
ここでのドーピングとは、製造業において一般的に用いられる技術であり、素材に不純物を秩序よく導入し、それによって意図的に素材の特性を変化させます。その結果、研究者たちは、25度でこの素材の性質を逆転させることに成功しました。
研究チームは4㎝四方の素材サンプルを採取し、屋根の上に置いてテストしました。その結果、年間を通して太陽光を75%反射することが分かりました。同時に、素材の外部への放熱量も、温度によって変化することも判明しました。
周囲の気温が25度を超えると、その熱の90%を上空に発散します。気温が低いときは、少ない熱しか発散しません。
この塗料を使えば、夏の冷房や、冬の暖房費を抑えることができます。また実験データをもとに、アメリカ各地の15種類の異なる気候モデルの屋根に、この素材を用いた場合の省エネ効果をシミュレーションしました。
主な研究者の1人である呉俊俏 (Junqiao Wu) 氏によると、この素材は季節がはっきりしている地域に効果的だといいます。
「フロリダ州やハワイ州では、あまり効果がないようです。アラスカ州では寒すぎてうまくいきません。気候がそれほど極端ではない地域で効果があります」と述べました。
研究チームのシミュレーションによると、この塗料を使用することで、アメリカの一般的な家庭では電気代が約10%節約できるといいます。
さらに研究者によると、自動車、電子機器、衛星、テント、衣類などにも使える可能性があるとのことです。
(翻訳・橋本 龍毅)
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