今から半世紀前、あるアメリカの探検隊がコロラド・キャニオンを探検した際、偶然、地球の地質年代が10億年以上もの間にわたって、謎の消失をしていることを発見し、この事は今日に至るまで数々の地質学者を悩ませ、現在も科学界で論争が続いています。
1869年、独学で学び地質学者となったジョン・ウェスリー・パウエルは、10人の隊員を率いて10ヵ月間の探検を行いました。その探検はワイオミング州のコロラド川の支流、グリーン川を1609キロメートルほど下ってグランドキャニオンを調査し、その結果を記録するというシンプルなものでした。
危険と隣り合わせの探検でしたが、幸運にも雄大な断崖、美しい絶壁、雲の上にそびえる奇妙で角張った崖など、彼らは多くの自然の驚異を目の当たりにしました。しかし、こうした自然の驚異の中でも、パウエルが特に興味を抱いたのは、後に
「神々の図書館」と呼ばれ、色とりどりの岩が並ぶ「偉大な書物の岩のページ」で、一行一行で地球の形成や歴史がわかるという壮大な峡谷でした。
しかし、パウエルはグランドキャニオンの絶壁を見上げながら、ある事に気がつきました。
崖の下に立って上を見ると、花崗岩や片岩(強い圧力を受けた粘板岩や頁岩)などの硬い結晶石が、縦に垂直に規則的に並んでいるのが見えました。結晶質岩層の上には厚さ305mの赤色砂岩があり、これがきれいに横一列に並んでいたのです。
しかし、ここで問題点が指摘されました。 パウエルは、垂直な結晶岩の層を数えて、この部分の厚さを3050メートルと推定しましたが、実際に測定してみると152メートルしかないことが分かりました。つまり、2千メートルもの岩盤が完全に消失していたのです。彼はこの不思議な出来事を「地層角度が不整合」と呼びました。
現在、地質学者の間では、最も若い硬質結晶質岩は17億年前、最も古い砂岩層の岩石は5億5千万年前に形成されたことが分かっています。つまり、地球の地質学的記録には10億年以上の空白があるのです。 なぜ、この中間層の岩盤が消失したのか、今もなお誰も知りません。
(翻訳・志水慧美)
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