半世紀ほど前の、昭和の風景です。
国鉄(当時)の駅のキオスクで必ず売られていたのが「冷凍みかん」でした。細長いビニール袋に入れられた4~5個のミカンを、そのまま冷凍したものです。
「やむをえず冷凍」とは限りません
ご記憶にある方には、昔の旅行の思い出とともに懐かしい一品です。
赤いネット袋に入った生鮮ミカンは冬から春までしか販売できなかったため、なんとか通年販売ができないものかと工夫したのが、この「冷凍みかん」でした。
食べると、生鮮ミカンの食感とは全く別のものになっていましたが、味はそこそこ甘く、真夏でもミカンが食べられる珍しさもあって、けっこう楽しめたように思います。ただ、一度凍った皮はちぎれやすくて、むくのに手間がかかりました。
「冷凍みかん」の名残ではないでしょうが、冷凍食品について、日本では「やむをえず冷凍する」という観念が今でも残っているのかもしれません。
確かに、果物や野菜は「新鮮なうちに生で食べるのが一番」という考え方を、特に訂正する必要はないでしょう。
ただし、冷凍技術の格段に進歩した今、ライフスタイルに応じて冷凍野菜や果物を適宜利用することは、現代人の健康維持に役立つ選択肢の一つとなっています。
「冷凍食品大国」の米国
その点、日本よりもはるかに冷凍食品が一般化している米国では、果物や野菜を冷凍保存することに何のためらいもないばかりか、むしろ栄養や風味を保存できる「合理的な手段」として認知されています。
そんな米国にも、一部の人には「冷凍された果物や野菜は、新鮮なものほどヘルシーではない」という考え方はあるようです。
これについて、ニューヨーク在住の栄養士であるデボラ・マルコフ・コーエン氏は「必ずしもそうではない」と述べて、「冷凍の果物や野菜は、栄養分、抗酸化物質および風味を総体的に保存するために、最も成熟した時期に収穫され、急速冷凍されるのです」と語ります。
この場合、冷凍は収穫直後に行われるため、青豆や桃など一部の食品では、缶詰のものより冷凍食品のほうが「魅力的な色」を保つことができます。
これとは対照的に、時季はずれの農産物は、新鮮であっても長距離輸送する時間を加味されるので、通常は成熟する前に収穫されます。
さらには倉庫での保存期間も含めて、消費者の食卓に乗るまでに相当な時間がかかるため、どうしても栄養分が損なわれ、風味も落ちてしまいます。
コーエン氏によると、冷凍ホウレンソウと、新鮮な生のホウレンソウを比べると、食物繊維、鉄分、葉酸、カルシウムなどの含有量において、「冷凍のほうが生のホウレンソウより明らかに高い」と言います。
ただし、せっかく冷凍保存された栄養分が損なわれないために、その調理法には注意しましょう。
例えば、冷凍ブロッコリーを鍋に沸かした湯で煮ると、ビタミンCや葉酸など水溶性の栄養素が流出することがあります。コーエン氏は、蒸す、電子レンジで加熱する、炒めるなど、栄養流出の少ない調理方法を勧めています。
冷凍食品の野菜や果物は、色や風味が変質しない限り、約1年間は冷凍庫で保存できます。ただし、包装袋を開けたら、できるだけ早く消費するようにしてください。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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