メラトニンに新しい可能性「認知症予防と改善に大きな期待」(2)

(前稿より続く)
科学者は、「アルツハイマー認知症患者のほぼ半数が、睡眠障害を持っている」と指摘しています。

ストレスホルモンから脳を保護

良質の睡眠を得させない睡眠障害は、アミロイドβタンパク質の沈着による脳内の「老人班」を増加させます。

老人班の出現はアルツハイマー型認知症の特徴ですので、まさにこの疾患の進行と密接に関連する現象です。

メラトニンは、脳の機能を高め、記憶力を維持するために必要な「さわやかな眠り」を補助します。臨床研究によっても、メラトニンは認知障害の進行を抑制する働きがあると指摘されています。

メラトニンのもつ神経保護作用として、例えばアドレナリン、コルチゾール、ノルアドレナリンなどの「ストレスホルモン」から脳を保護することが挙げられます。

これらのストレスホルモンは、例えば身の危険を感じて瞬時に反応するような場合に交感神経を興奮させますが、そのぶん平常時の記憶力を低下させてしまいます。

さらに細胞の研究によると、メラトニンの作用が、脳が新しい環境に適応する能力を高めることが示されています。

また、メラトニンは有害なフリーラジカルを除去する強力な抗酸化剤でもあります。

興味深いことにメラトニンは、抗がん剤であるフルオロウラシル、および抗うつ薬のスコポラミンを含む薬剤がもたらす副作用に対しても、人体を保護する作用が有効である可能性が研究により示されています。

「メラトニンがこれらの作用する原因としては、脳内の記憶を司る器官である海馬において、細胞分裂を促進するからであろう」と研究者は推測しています。

 

サプリ服用は容量を守って

なお、メラトニンのサプリメントは日本でも市販されていますが、服用に当たっては必ず用量を守ってください。

すでに認知症の治療を受けている人は、各種サプリメントの服用についても、必ず事前に医師の指導を受けることを、ご家族も含めてご承知おきください。

もちろん、通常の食事から十分なタンパク質を摂ることが大前提です。

専門家によると、体がメラトニンを産生するには、食事からとる必須アミノ酸であるトリプトファンが不可欠です。肉、魚、豆、種子、ナッツ類、豆乳や乳製品などの食品には、トリプトファンが多く含まれています。

 

(翻訳編集・鳥飼聡)