運動しなくても、これらの野菜で筋力をつけられます

私たちが幼い頃に読んだ漫画に、正確な栄養情報が書かれているなんて、誰が想像したでしょうか。ある年代の読者なら、有名漫画「ポパイ」を覚えているかもしれません。ポパイは、悪者ブルートと戦うために筋肉をつけなければならないとき、ほうれん草の缶詰をガツガツ食べていました。実際に、ポパイのやり方は意外と合理的なのです。

『栄養学雑誌』に掲載された研究では、1日1カップの緑の葉野菜を食べることで、筋肉の機能が有意に向上することがわかりました。そして、筋肉機能の利点は漫画内のようにいじめに勝つことだけにとどまらず、骨の強さをサポートしたり、加齢に伴う転倒のリスクを軽減したり(高齢者にとって非常に有益なことです)、健康のあらゆる側面に関連していることがわかりました。

ここでは、体の機能を高める「葉物野菜」の威力を紹介します。
 

硝酸塩を多く含む野菜は、筋力を高める効果がある

これは、パースにあるエディス・コーワン大学の研究者が、オーストラリアで糖尿病、肥満、生活習慣に関する研究に参加した3759人のボランティアを対象に12年間にわたって行った研究です。

硝酸塩を多く含む野菜を食事で摂取している人は、摂取量の少ない人に比べて、下肢筋機能が11%向上し、膝の伸展力が2.6kg向上することが分かりました。また、高硝酸塩のグループは歩くスピードも他と比べて速いこともわかりました。

ボランティアの1日の平均硝酸塩摂取量は65mgで、そのうち81%以上が野菜からの摂取でした。

興味深いことに、硝酸塩を多く含む野菜の摂取は筋力の増加と関連しており、いかなる身体運動とも関連していませんでした。しかし、科学者はウェイトトレーニングと定期的な運動を推奨しています。

エディス・コーワン大学栄養研究所の研究責任者であるマーク・シム博士は、1日に5~6皿の野菜を食べることを推奨しており、「そのうち少なくとも1皿は、筋肉と心臓血管の健康によい緑の葉野菜にすべきだ」と述べています。

葉物野菜ではありませんが、ビートは最も硝酸塩濃度の高い野菜であり、次いでルッコラ、ほうれん草、ケールとなっています。ビートの葉、キャベツ、ネギ、ブロッコリーにも硝酸塩が豊富に含まれています。

 

ビートは葉物野菜ではありませんが、硝酸塩の含有量が最も多い野菜です。(Shutterstock)

 

硝酸塩を多く含む野菜はさらに効果的

野菜の恩恵を受けるのは筋肉だけではありません。硝酸塩を多く含む野菜と心臓血管の健康との関連性が研究されています。動物実験では、発がん性物質にさらされたラットは、肝臓の脂肪酸化が低下し、抗酸化酵素の量もわずかに減少していました。そこでビートジュースを与えると、スーパーオキシドジスムターゼという抗酸化物質の活性が3倍になり、血圧が下がり、心臓の健康につながることがわかりました。

『応用生理学誌』に掲載された印象的な研究では、末梢動脈疾患を持つ参加者が毎日ビートジュースを摂取したところ、跛行(歩行異常の一種)の痛みを感じ始める前に18%多く歩くことができたといいます。

さらに、競技サイクリストを対象とした横断的研究では、標準的なビートジュースと硝酸塩を除去したビートジュースの効果を比較しました。硝酸塩を含むビートジュースを摂取したアスリートは、4Kおよび16.1Kレースにおいて、エネルギー出力とパフォーマンスが向上したことを発見しました。

科学者たちは、ビートジュースを「比較的簡単な、運動不耐性を改善する方法」として認知しました。また、別の熱心な研究者は、ビートジュースの摂取を「循環器系疾患に対する低コストで自然な治療法」と表現しています。
 

硝酸塩と亜硝酸塩 は 敵か味方か

野菜に含まれる硝酸塩には、健康を増進する力があると研究者は考えています。しかし、この化合物は、有害にも有益にもなりうる諸刃の剣なのです。

硝酸塩は、人間の体内だけでなく、野菜や果物にも自然に含まれています。また、腐敗や褐変を防ぐために食肉加工品に添加されています。

硝酸塩は体内で亜硝酸塩に変換され、2つの結果をもたらします。一方では、亜硝酸塩は血圧を下げる一酸化窒素の生成を促進する働きがあります。しかし、もう一方では、特に高温にさらされたり、タンパク質と組み合わさったりすると、有害なニトロソアミンに変化することもあります。

幸い、葉物野菜の場合、抗酸化物質であるビタミンCが多く含まれているため、ニトロソアミンの生成を防ぎ、硝酸塩の健康効果を維持することができるのです。
 

アブラナ科や葉物野菜も血管の石灰化を防ぐ可能性がある

2020年に『イギリス栄養学雜誌』に掲載された研究によると、ブロッコリーやルッコラなどのアブラナ科の野菜を多く食べている高齢女性には、血管の損傷が少ないことがわかりました。また、女性は大動脈に過剰なカルシウムの沈着が少なく、その結果、心臓発作や脳卒中のリスクも減少していました。

実際、1日に45g以上のアブラナ科の野菜(生のキャベツ半カップや蒸したブロッコリー1/4カップなど)を摂取している女性は、カルシウム沈着のリスクが46%有意に低下していました。このことから科学者たちは、カルシウムが動脈から骨に入るのを助けるビタミンKが、健康に役立つと推測しています。

注:多くの自然健康専門家は、体内の軟部組織に沈着したカルシウムを減らすことができるのは、納豆などの発酵食品によく含まれるビタミンK2だけだと示しています。
 

緑の葉野菜は必須ビタミンとカロテノイドの宝庫です

緑の葉野菜はよく「スーパーフード」と言われますが、その称号にふさわしいものです。ビタミンA、C、E、K、そしてカロテノイドという、病気に効く天然植物色素が豊富に含まれています。

葉物野菜には心臓に良い硝酸塩が豊富に含まれているほか、がんや脳卒中の予防に役立つビタミンBの一種である葉酸も含まれています。さらに、野菜には重要な微量栄養素の一部である必須ミネラルの鉄、マグネシウム、カリウム、カルシウムが健康に良い量で含まれています。

食物繊維が豊富で低カロリー、しかも低GI食品である葉物野菜は、健康増進に最適な食材です。しかし、野菜はオーガニックのものを選ぶのが一番良いでしょう。

ミックスサラダはもちろん、ブリート(トルティーヤに具材を乗せて巻いたメキシコ料理)やスープ、シチュー、オムレツにも葉物野菜を加えてみましょう。葉物野菜はレモンとニンニクで炒めたり、カイエンペッパーで味付けしたり、生のままオリーブオイルとバルサミコ酢で和えたりするのもおすすめです。

どのように楽しむにせよ、葉野菜と真っ赤なビートがもたらす健康効果は絶大です。その証拠に、ポパイは漫画の中で常に正しいことを行っていました。

(翻訳・香原咲)