脂肪分が豊富であるところから、「森のバター」とも呼ばれる果物がアボカドです。
「アボカドはフィトステロール(植物ステロール)が果物のなかで最も豊富です」というのは、アボカドを推奨する団体からの誉め言葉です。その推奨がどの程度かはともかく、ここのキーワードである「果物」に注意してください。
フィトステロールは植物性食品に含まれる栄養素で、コレステロール値を低下させます。
その仕組みは、コレステロールが摂取量の40%以上が小腸から吸収されるのに対し、フィトステロールは吸収率が5%以下であるため、フィトステロールは小腸におけるコレステロール吸収を阻害する(抑える)ことによります。
確かに、アボカドは他の果物よりフィトステロールを多く含んでいます。ただし、フィトステロールは脂溶性物質であることを忘れないでください。ほとんどの果物は脂肪がほとんど含まれていないため、「他の果物に比べれば」脂肪が圧倒的に多いアボガドが1位になるのは当然なのです。
ではフィトステロールの含有量について、アボカドとナッツ類を比べると、どうでしょうか。アボカド1個には約100 mgのフィトステロールが含まれています。
同量のゴマまたはゴマペーストでは約400 mgが含まれています。ピスタチオ、カボチャの種、ヒマワリの種ならば、同量で約300 mg含まれています。
アーモンド、亜麻仁、マカダミアナッツは同量で約200 mgを含みます。同じ量のチョコレートでも、アボカドの2倍に相当するフィトステロールが含まれています。
一般的には、ナッツ類およびヒマワリなどの種子類のフィトステロール含有量が最も高いと言えます。
米国の栄養専門誌の研究によると、ナッツを1オンス(約28.3g)毎日食べることによって、悪玉コレステロールを8%減らすことができると言います。ただし、ナッツ類に含まれるコレステロールを低下させる成分は、フィトステロールだけではないかもしれません。
食物繊維あるいはその他の植物性栄養素がコレステロールを下げるのに役立つこともあります。アボカドにも同じような成分があるかどうか、それはさらに検証しないと分かりません。
半世紀以上前のいくつかの研究では、人々が毎日の食事にアボカドを加えるとコレステロール値が下がり、アボカドを除くとコレステロール値がもとに戻る、アボカドを再度加えるとまた下がる、と言います。
これらのデータは(この部分だけ見れば)なかなか説得力があります。
ところがよく見ると、この時の研究者は、ただアボカドを加えただけではなく、日常の食事のなかから動物性脂肪を取り除いていたのです。
それならば、被験者のコレステロール値が下がったのも不思議ではありません。これはコレステロールとアボカドに関する研究というよりは、コレステロールとラード(豚の油脂)に関する研究であり、問題の設定としては正確でなかったようです。
従来の、コレステロールとアボカドに関する研究のほとんどがそうでした。
それらの研究は代替研究、すなわち食事の飽和脂肪酸の代わりにアボカドを用いたものです。料理にアボカドを使って、動物性油脂である飽和脂肪酸の摂取を減らせば、当然コレステロール値は下がります。
これについて研究者は、「飽和脂肪酸の代わりにアボカドを使用することが重要であり、通常の食事にアボカドを追加することが有益なのではない」と強調しています。
結局のところ、コレステロール値を下げるには、「アボカドを食べるだけでなく、コレステロールのもととなる食品の摂取を減らすことが必要」ということでしょう。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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