唾液に含まれる特定のタンパク質に、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の新たな感染を防ぐ働きがあることが、日本の研究チームによって明らかにされました。
7月6日、大阪府立大学の研究チームは、唾液中の好中球関連カチオン性タンパク質が中共ウイルスによる感染を防ぐことを実証し、米国生化学・分子生物学術誌である『The Journal of Biochemistry』と米国国立医学図書館定期刊行物に発表しました。
中共ウイルスは表面のスパイクタンパク質がヒト細胞表面にある受容体に結合して感染を起こすことが、病理学的研究により明らかにされています。細胞分子生物学を専門とする松原三佐子教授と吉里勝利教授らの研究チームは、希釈した唾液を人間の細胞の表面に塗り、そこに中共ウイルスと同じ感染メカニズムを持つウイルスを振りかけて観察しました。その結果、唾液中のタンパク質が受容体を覆ってウイルスと結合できないようにし、感染を防いでいることがわかりました。唾液の濃度が高いほど、ウイルスは細胞表面の受容体に結合しにくくなる傾向もありました。
また、唾液中のヒストンH2Aや好中球エラスターゼが、ヒト細胞表面へのウイルスタンパク質の結合を阻害する役割を持つことも研究により判明しました。
研究チームは、乳幼児期に多く分泌される唾液が、高齢になると少なくなり、特定のタンパク質が作られなくなることが、高齢者層で病気の発症率や重症度が高くなる一因ではないかと考えています。
松原教授は、ウイルスを攻撃する薬ではなく、人間の体がすでに持っている能力を開発したいと語っています。
唾液は傷の治癒を促進
オランダのアムステルダム大学は、唾液中に、創傷治癒を促進する効果を持つ2つの小分子タンパク質、ヒスタチン1とヒスタチン2を発見しています。
研究員は人間の口内頬側から取った上皮細胞を複数のシャーレで培養し、細胞がシャーレの表面全体を覆うまで増殖させた後、細胞層の一部を削り取って「人工の傷」を作り、それぞれ唾液と細胞が壊れたり縮んだりしないようにする等張液で処理しました。
16時間後、ヒトの唾液に浸した細胞層の傷はほぼ完治していましたが、対照の無処理のものはまだ傷口が開いていたのです。
中医(中国医学)では、唾液のことを「津液」といい、「金津玉液」ともいわれます。中医は臨床の場で、「唾液は人間の精氣から生まれたもの」であり、食べ物の消化、口の中の潤滑、抗菌作用など、体にとって非常に重要な役割を担っていることを発見しました。
古代の医学者である陶弘景は、「玉泉を食べる人は、寿命を延ばし、百病を取り除くことができる」と述べています。つまり、唾液を常に意識して飲み込むことで、気管、食道や胃を養い、病気を取り除き、延命することができるのです。
(翻訳者・春野瑠璃)
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