登山は、がんに対して副作用のない「治療への希望」に最適な薬である

「治療への希望」の意味するところは、単純な物や侵襲的治療にとどまらず、精神的に心地よい治療から始まり、感覚的な癒しのプロセス、最適な抗酸化治療へと、多面的な視点で治療の定義と範囲を広げていくことです。

その最良の治療法の一つがハイキングです。美しい景色、楽しい仲間、絶好の天気、そして味の饗宴を取り入れることで、がん細胞に対する最高の防御策を生み出すことができます。
 

森の中へ、副作用のない治療薬

がん患者さんにとって、治療は長期にわたることが多く、時には同時に複数の治療が必要になることもあります。その後も腫瘍の転移や再発の心配があり、不安で日常生活に支障をきたすことさえあります。専門的な治療とは別に、ストレスを解消して自信をつけ、暗闇から抜け出すための心理的なサポートが必要なのです。

そこで、山や森が病気を癒す効果があることを知り、ある病院では登山チームを結成しました。病院の医療スタッフを除いて、そのほとんどが病院の患者さんです。
病院の登山チームであれば、全員が互いの体調を理解しているため、励まし合い、互いの能力や状況を理解し、心温まるパートナー集団を形成することができます。

適切なグループであることだけでなく、登山活動を一貫して行うことも重要です。また、病院の山岳部では毎週土曜日にハイキング、サイクリング、チャリティーイベントなどの定期的な旅行を手配し、すべての患者さんが毎週活動に参加できるようにしています。

「すべてのハイキングは、人生で起こるどんなことも乗り越えられると信じる強さを与えてくれました」と、ある登山家の感想文にありました。

また、仲間たちは、医療関係者も含めたグループを立ち上げ、患者さんやそのご家族ががんに直面したときに危険な状態にならないよう、どんな質問にも的確に答え、経験を共有し、アドバイスや付き添いをすることにしています。
 

家族関係や生活の質を向上させる

がんになることは、患者さんにとってもご家族にとっても大変なことです。患者さんは転移・再発の可能性や治療の副作用などのプレッシャーに直面し、ご家族は患者さんの介護に追われ、時間の経過とともに口論になり、次第に関係が疎遠になっていくこともあるようです。

私がリーダーを務めていた頃、チームの中に山岳部に入部した患者さんがいて、家族間の関係修復に役立ったこともありました。登山前の体力トレーニングや登山過程に家族が参加することは、間接的に家族の絆を深め、壊れかけていた関係をより強固なものにしたのです。

これによって、家族の絆が深まりました。

また、働く女性で、生活や仕事、家庭に忙しく、肉体的・精神的な負担からがんを発症する患者さんもいます。
がんになる前も、休日は家の中で過ごしており、がんになった後は、一日中家にこもっていたそうです。他のがん患者さんに誘われて登山チームに参加したところ、台湾の山や森がとても美しいことに気付き、登山中はチームメイトによく助けてもらったそうです。

登山は、病気を持つ人にとって非常に敷居の低いスポーツです。お金や手間をかけて道具を揃えなくても、滑りにくいスニーカーと水筒と帽子さえあれば、山や森で森林浴を楽しむことができるのです。

登山クラブに入会しなくても、平日に自宅近くの山を散策すれば、時間や競争のプレッシャーがなく、自分にとって一番心地よいペースで登ることができます。
 

リラックスして登るための登山テクニックを学ぶ

山頂に立って大地を見下ろせば、青々とした松林、どこまでも続く丘、流れる雲・・・・。登山の苦労は美しい景色とともに吹き飛んでしまいます。

頂上まで登るのはとても達成感がありますが、その分、つらいです。山頂に向かう途中、自分は喘ぎながらどんどん重くなっていくのに、他の人たちは速く歩いていて、とてもうらやましく思います。毎回、登山の翌日は筋肉痛で、ベッドに横になって動けないこともあります。
楽に登りたいのであれば、普段の運動に加えて、登山の技術も必要かもしれません。
 

登山前の必需品

近年、登山道に不慣れなことや体力不足で崖から転落するというニュースが多くあります。
したがって、すべての登山者が登山の基本技術を十分に理解し、エネルギーを賢く配分することが重要で、取り返しのつかない事態を避けるために細部にまで気を配ることが不可欠です。
 

この記事は、『希望治療:整合性癌症照顧,最新醫療、心理與山林療癒』(治療への希望・統合的がんケア最新医療・心と山の癒し:博思智庫出版社)から引用しています。

(翻訳・里見雨禾)

張睿杰
蔡惠芳
陳佳宏