オーストラリア、モナシュ大学の研究によると、生活習慣の改善に加え薬物療法は、手術やステントの挿入といった特定の侵襲的治療よりも脳卒中のリスクを低減できることが明らかになりました。
モナシュ大学の研究者であるアン・アボット(Anne Abbott)准教授は、脳卒中の主な原因である進行した頸動脈狭窄症に関する40年以上のデータを分析し、食事、運動、禁煙などのライフスタイルの改善と適切な薬物治療を併用すれば、心臓ステント手術と同等かそれ以上の脳卒中予防効果があることを明らかにしました。
80歳の方の10人に1人は、大動脈に脂肪の塊(プラーク)が溜まることで起こる頸動脈狭窄症を患っています。 大動脈は脳に血液を運んでいますが、このプラークが動脈に詰まることで、血液の供給が制限され、脳卒中のリスクにつながります。
モナシュ大学の解析によると、無症状の末期頸動脈狭窄症の患者さんにおいて、生活習慣の改善を行った場合、脳卒中のリスクを減少させることができるといいます。
アボット氏によると、「外界に頼るより、自分で努力した方が良い。また、運動やバランスのとれた食事、禁煙などの健康的な生活習慣と、適切な薬物療法を組み合わせることで、高血圧などの主な危険因子を減らすことができる。これにより、脳卒中や心臓病発作のリスクを効果的に低減できる」といいます。
頸動脈手術とステント留置術の合併症
頸動脈内膜切除術( CEA )では、外科医は患者さんの頸部の頸動脈より上側の部分を切開し、動脈を開いてプラークを除去し、動脈を縫い合わせます。
この手術に伴う潜在的な合併症には、脳卒中、一過性脳虚血発作(ミニ脳卒中)、心臓発作、目・耳・鼻・舌の特定の機能に関する神経障害、脳への出血、首の反対側の新たな詰まり、感染、高血圧、不整脈など、があります。
頸動脈形成術およびステント留置術では、X線に誘導されながら、バルーン先端の小さなカテーテルを鼠径部の大腿動脈から狭窄した頸動脈に通していきます。 その後、バルーン先端を膨らませてプラークを片側に押し出し、動脈を広げ、再び狭くならないように小さな金属の管(ステント)を新しく開いた血管に留置し、最後にカテーテルを抜去します。
この手術に伴うリスクとしては、血管形成術の際に血栓が緩んで脳に入り込むことによって起こる脳卒中や一過性脳虚血発作などが考えられます。 また、術後数週間から数カ月でステントに血栓ができ、脳梗塞につながる可能性もあります。
アボット氏は、生活習慣の改善により、脳卒中の発症率が非常に低くなったため、頸動脈手術はもはや大多数の患者さんに利益をもたらす方法ではないと考えています。
また、彼女は「しかし、頸動脈手術はオーストラリアや海外ではまだ非常に一般的で、脳卒中や死亡、心臓発作などの大きな合併症を引き起こし続けており、費用も高額です」と言っています。
アボット氏は現在、医療部門に対し、生活習慣の改善を活用し、患者さんにとって最良の結果を得るために不必要で危険な処置をやめるよう呼びかけています。
アボット氏による解析結果は、2022年6月にオープンサイエンス誌「神経病学最先端」(Frontiers in Neurology)に掲載されました。
元記事「Lifestyle Changes Better Than Surgery for Preventing Stroke: Analysis」は、《英語版大紀元時報》に掲載されたものです。
(翻訳編集:李明月)
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