りんごを日常的に食べると、がんで亡くなるリスクが減るなど、延命効果があることが知られています。では、なぜそんなに効果があるのでしょうか。リンゴの皮には豊富な栄養素が含まれており、思わぬ効果が期待できるという研究結果があります。
「イギリス栄養雑誌」(British Journal of Nutrition)に掲載された2016年の論文によると、70歳以上の女性1456人を対象に、毎日りんごを食べない人の生存曲線を調べたところ、10年後に4分の1近く、15年後に半数近くが死亡することが判明したそうです。しかし、1日平均半分のリンゴを食べた人の生存曲線は異なり、1日1個のリンゴを食べた人、1日100グラム以上のリンゴを食べた人は、さらに長生きだったのです。
研究結果から、リンゴを日常的に食べている人は、食物繊維などリンゴに含まれる栄養素の摂取量が多いだけでなく、砂糖や飽和脂肪の摂取量も少なく、つまり全体的に健康的な食生活を送っていることが研究で明らかになりました。
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そこで、リンゴを食べることで単に健康的な食生活を送れているのか、それともリンゴ自体に他の特別な効果があるのかを検証してみましょう。
例えば、アスリートに朝のトレーニング前にカフェイン入りのエナジードリンク、ブラックコーヒー、リンゴを摂取するよう指示しました。前の二つは通常、アスリートがトレーニング中に脳を刺激してパフォーマンスを上げるための常套手段ですが、リンゴは果たしてその役目を果たせるのでしょうか。
結果、リンゴとカフェイン飲料は、ほぼ同等の効果があることがわかりました。しかし、この種の研究の問題点は、彼らが研究の為にりんごを食べているという事を知っていることです。つまり、結果が良くなるよう無意識のうちに同時に違う健康方法を実施している可能性があり、結果に偏りが生じているのかもしれません。
そこで研究者たちは、特定のリンゴ由来成分の試験に着目し、半分の人がリンゴ成分、半分の人が砂糖の錠剤、という最後まで誰が何を飲んでいるのかわからない二重盲検プラセボ対照試験を行いました。しかし、問題はあくまで錠剤で、リンゴを直接食すわけではないので、リンゴに含まれる何千もの植物栄養素の間の相互作用を排除してしまうことになります。
りんごに含まれる特定の栄養素のほとんどは、皮に集中しているのです。そこで研究者は、皮を捨ててしまうのではなく、皮を乾燥させ、不透明なカプセルに粉末化することを選びました。このカプセルを二重盲検試験に使用したところ、リンゴの皮の粉末を少量でも摂取すると、植物化学物質と抗酸化物質の活性が著しく高まることがわかりました。
また、リンゴの皮の粉末は肉料理に重要な役割を果たします。『動物と飼料科学雑誌』( Journal of Animal and Feed. Sciences)に掲載された2016年の研究によると、乾燥したリンゴの皮の粉末は、食肉中の微生物の増殖や拡大を抑え、発がん性物質の生成を防ぐことができるそうです。
例えば、焙煎時に生成される発がん性物質のひとつにβ-カルボリンというアルカロイドがありますが、これは神経毒であり、パーキンソン病などの神経疾患をさらに悪化させる可能性があります。この物質は生の肉には存在せず、調理時にのみ生成されるため、まずリンゴの皮の乾燥粉末で肉を熟成させると、このアルカロイドの量が半分になるのです。
また、リンゴの皮は、遺伝毒性でDNAに損傷を与える複素環式アミン(HCA)の生成を抑制し、調理した肉に含まれる発がん性物質の量を半分以下に抑えます。
肉類にこれらの発がん性物質が含まれていることから、HCAの生成を阻害してリスクを低減することが求められています。現在のところ、肉類摂取時にこれらの有害物質への曝露を減らすには、肉調理時にリンゴ皮の粉末を添加する以外に方法はないでしょう。
乾燥リンゴ果皮粉末は、ラットで「強力な抗炎症・抗酸化作用」が確認されていますが、人への抗炎症作用もすでに確認されています。
2014年にアメリカの研究者が『薬用食品雑誌』(Journal of Medicinal Food)に発表した論文によると、「慢性的な痛みを伴う関節可動域の中程度の低下」のある12人に、12週間毎日スプーン1杯の乾燥りんご皮を与えた臨床試験では、痛みが徐々に減り、首、肩、腰、股関節の可動域が改善されたとのことです。
このことから、「リンゴの皮の乾燥粉末の摂取は、関節機能の改善や痛みの緩和と関連する」ことが示唆されました。なぜ、「関連する」という表現を使うのでしょうか。それは、この試験には対照群がなく、被験者の改善は自己流かプラシーボ効果の結果である可能性があるからです。それでもリンゴの皮をもっと食べる価値はあると思います。
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