庶民の小さいオタネ人参と呼ばれる大根は、古来より代表的な食薬として親しまれてきました。その強力な消化促進・宿便を出す効能によって、糖尿病や便秘など多くの現代生活習慣病に悩む人々に、最も人気のある食材の一つとなっています。
一方、大根は涼性食材であり、気を下げ便通に良い反面、気を消費して分散させてしまうので、冬場の季節、また脾胃が弱い人は、温熱性で気を補う食材と組み合わせて調和したり、調理法に気をつけたりして、その効果を最大限に生かすように注意する必要があります。そうしなければ、得失相半ばすることになってしまいます。
バナナの十数倍もの便秘解消効果
インターネット上では、「大根はバナナの十数倍もの便秘解消効果を持つ」という話が広がっていました。事実はともかく、大根の胚を潤し便秘を解消する効果には確かな裏付けがあります。
中医学の視点から見れば、大根は涼性食材で、たっぷり水分を含んでいます。そのエネルギーは肺経、胃経と大腸経という三つの経絡に入るので、肺・胃・大腸の燥熱を清め冷やし潤す働きがあります。この働きにより自然に痰や咳を止め、炎症や体に入った毒を取り除き、唾液の分泌を促し喉の渇きを癒し、腸を潤し便を通じさせます。これは大根が便秘を解消する原理の一つです。
スムーズに排便するには、水分補給の他に、もう一つの条件があります。それは、腸管を広げ、大腸に便を排出する十分な力を与える空気圧が必要ということ。この下に押し出す力は、肺気が下へ降りる力に由来しています。大根は根の形をして、5行の「木」性食材で、手で持つと重いと感じられます。
当然、大根に気機の詰まりを解消して肺気を下降させる力があるので、肺気を下げ、胃で滞っている気を解消して腸管を広げることができるのです。肺からの空気圧は、自然に便を押し出すだけの力を持っています。
しかしこの場合、便が硬くなくても、便秘がなかなか解消できないこともあります。この機能をバナナは持っていません。
お米ととろろとの配合で効能倍増
大根は肺の気を下げ、溜まったガスを解消し、流れの悪い経絡を整える作用がありますが、気を補う機能が欠けているため、気を消耗し降ろすという欠点があり、長期に大根を単独で摂ると、肺、胃、腸の気が不足し、かえって体が弱り便秘気味になってしまいます。
気は体の経絡のエネルギーであり、エネルギーが不足し、「電力」が弱いと、気の通り道が妨げられていなくても、内臓の機能が弱り効かなくなるので、大根を千切りにして、お米や山薬と一緒に大根粥にすると、このデメリットが避けられます。
白くて甘い味のお米は肺経に入り、脈拍を強くするので、粥にすることで胃気や肺気を素早く補い、唾を出させて咽の渇きを取り、五臓を養う効果もあります。
平性(東洋医学で、温熱性・寒涼性のどちらでもないこと)の山薬は脾の働きを強め肝を養い腎を温めるだけでなく、大根の冷ます力を穏やかにする効果があります。虚寒体質で体が弱い方は、温性の生姜やネギをうまく使って、煮る時間を2時間にすると、さらに涼性を抑え、デメリットを最小限に抑えることができます。
お粥で血糖値を上げるのが心配な糖尿病患者は、お米を少なめにして、山薬を多めに入れると気を補うこともできます。山薬は唾を出させて咽の渇きを取り、消化を助ける作用にも優れており、低カロリーな上に腹持ちがよく、腎臓の機能を高め精気を収納固渋する作用もあるので、糖尿病の方に最も適しています。
お粥にする他に、角切りにした大根と山薬に、豚肉や鶏肉を適量加え、ネギ、生姜、コショウ、塩などの薬味を使ってスープにするのもおすすめです。よりバランスのとれた栄養を摂取できます。
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