腎臓の実である栗は、腎臓と脾臓を強化し、万病を予防します

中医学では、腎臓と脾臓は生命の根本的な守護神とされています。 腎臓は先天の土台であり、脾臓は後天的な土台です。この2つの要素が健康であれば、あらゆる病気を回避できます。健康管理や治療においても、最も重要なポイントです。栗は腎臓と脾臓を守ることができるのです。

神医が絶賛する栗の実

唐の時代の神医である孫思邈は、栗を「腎臓の果実で、腎臓病のために食べるべきもの」としていました。李時珍は『本草綱目』の中で、「腎不全や、腰や足が弱いのを治すには、生の栗を袋に入れて干し、毎回十数個食べ、その後に豚の腎臓粥を食べれば、長い間丈夫でいられる」と書いています。漢方では「山ほどの滋養強壮剤より一握りの栗」とよく言われるのはこのためです。

漢方医によると、栗は温かく甘い性質で、脾臓・胃・腎臓の経絡に入り、胃を滋養して脾臓を強め、腎臓を補い、腱を強め、血行をよくし止血します。かつて明の時代の李時珍は「悪寒がして下痢が激しいとき、栗を茹でて20~30個食べれば、すぐに治る」と言いました。これは治療効果を示すものです。

しかし、栗の価値を理解するには、まず中医学レベルで見た腎臓と脾臓の二つ(先天の土台と後天的な土台)の重要な役割と相互関係を理解する必要があります。そうして、腎臓と脾臓を強化することの重要性を真に理解できるのです。 病気になる前に自身をケアする方法を理解することができるでしょう。

経絡を動かすエンジン「腎臓」

伝統的な中医学は、現代医学とは異なり、腎臓と脾臓の機能について述べています。腎臓と脾臓の2つの経絡システムに焦点を当て、 経絡を循環するエネルギーを、それぞれ腎気と脾気と呼びます。この2つは、人体回路の2つの回路に例えることができ、 腎臓と脾臓の機能をそれぞれ制御します。

例えば、人体を車に例えると、腎臓はエンジンで、エンジンが強力だと車もパワフルで速く走ります。つまり、腎気は五臓六腑の経絡一式を動かす原動力なのです。腎臓の気は、身体の五臓六腑の経絡、人体回路を連続的に動かす原動力となっています。したがって、腎臓は身体の機能の最も根本的な始動装置なのです。

人がまだ母体の中にいるときは、脾臓と胃は消化のために働いておらず、肺も呼吸を始めてないので、体の進化を促すのは腎臓の気です。したがって、腎臓の気は身体の生命エネルギーであり、経絡全体とその継続的な循環を支える原動力です。それは、人間の目で見える血液循環の仕組みに基づくものではありません。

心臓は、人間の目に見える血液循環の原動力ですが、心臓の形成や心臓自体の鼓動を含む人体の臓器や経絡の形成と進化を促すのは、腎臓にある腎の気なのです。 したがって、腎臓は人体の回路エンジンです。

『黄帝内経』で腎臓を「力の器官」と呼ぶのはこのためで、体を強くし、活力を回復させる気のエネルギーの主要な中心という意味です。そのため、人体の先天の土台なのです。

腎臓は、中医学では、「水」に属し、五行の水で、水は生命を生み出す宇宙の自然原理と一致し、生命の源です。 したがって、身体の経絡のエネルギーメカニズムは、腎臓の気によって活性化されます。 腎臓の気が不足すれば、体の回路に問題が生じ、五臓六腑の機能にも当然問題が生じ、あらゆる症状が発生します。 

しかし、腎臓の経絡から始めて腎臓の気を補う方法を知らなければ、体の回路を動かす力もなく、臓器の機能を回復させることもできません。では、どうしたら病気を治すことができるのでしょうか。 腎臓の気の重要性は明白です。 漢方医が、腎臓の気を養い、腎陽を強め、本質と気を強化するため、漢方薬を処方するのはこのためです。 その目的は、その原動力を活性化し、経絡の流れを正常に戻すことです。

では、このエネルギーを常に補充するためには、どうすればよいのでしょうか。 これには脾臓と胃が関係しています。

脾臓と胃は体の発電所であり、血液を作り出す源

簡単に言うと、脾臓と胃は食物を気と血液に変える源であり、気のエネルギーの発電所であり、血液の生成装置です。 脾臓と胃が元気であれば、腎臓へのエネルギーの流れが一定になりますので、 経絡が継続的に運用できます。 同時に、気と血は相互依存し、陽の気は血液に養われ運ばれる必要があり、陰と陽は互いに依存して変化し、身体の生理活動を共同で営みます。 脾臓と胃が後天的基盤と呼ばれるのはこのためです。

腎臓と脾臓の関係は、一言でいえば、腎臓は身体の経絡を開始し、実行する役割を担い、身体の回路のエンジンであり、脾臓は腎臓にエネルギーとそれを養う血液を供給する役割を担い、 腎臓が十分な力を発揮できるようにしています。

実は、栗には奇跡的な働きがあり、腎臓を養ない、脾臓を強化できるのです。
 

栗は男性の前立腺の形に似ている

興味深いことに、現代医学は、男性の前立腺の大きさはちょうど栗の実くらいで、形も栗を逆さまにした形でよく似ていることを発見しました。膀胱のすぐ下、尿道の周りにあります。前立腺の問題は年配の男性に非常によく見られます。頻尿や腰や膝の衰弱などの症状はすべて、伝統的な中医学では腎臓の気の低下に起因しているとしています。

実は、栗は腎臓の気を活性化し、前立腺の問題を修復し、頻尿の現象を軽減または消失させます。又、腎臓は骨と脳の主であり、腎臓の気が強いと骨髄と脳髄が養われますので、高齢者は認知症や物忘れ、腰や膝の衰えや痛みなどを効果的に予防することができます。

栗は気と血の流れを回復させ、肝臓の気を養う二大栄養源なので、春先に起こしやすい、怒り、鼻血、不眠、めまい、咳、喘息、喉の痛みなどの症状が緩和されます。したがって、春に肝臓を養うことは非常に大切です。

栗は焼いて食べたり、お粥に入れたり、鶏肉と一緒にスープに入れたり、いずれも強壮効果が高く、簡単に手に入れることのできる宝物です。誰でも食べられ、1日数個食すのも簡単です。その効果は時間が経てば徐々に現れてくるでしょう。

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。