【一網打尽 Yì wǎng dǎ jìn】
網を使って、魚をすべて取りつくすの意から、一度に悪人などを全部捕らえること。
北宋の仁宗の時、宰相呂夷簡が、保守政策を実施して財政難をもたらしました。そこで、范仲淹(はん ちゅうえん)をはじめとする革新グループが、積極的に時弊を正し、新しい政策を推進するために、蘇舜欽(そ しゅんきん)を集賢院の校理官(官名)の任に就かせ、上奏官(官名)をも兼ねさせました。
よって、蘇舜欽はたびたび、仁宗に上奏し、呂夷簡の誤りを指摘しました。さらに蘇の義父、杜衍(とえん)が枢密使(※)の要職で政務を整頓しました。しかし、当時の侍従顧問の劉元瑜が、呂夷簡のご機嫌を取るために、蘇舜欽を誣告し、さらに、それによって、杜衍を攻撃したのです。その結果、蘇は皇帝に罷免され、范仲淹はのけ者にされました。
また、革新グループのメンバーのほとんどは連座され、罷免されたり、左遷されたり、地方官の任に就かされたりして、一時期の朝廷は、人材が居ないほど酷い状態に陥りました。故に、劉元瑜が呂夷簡に、「私は宰相のために、彼らを一網打尽にしましたよ」と言ったのです。
「一網打尽」は、今、同類のものを一挙に捕らえつくすこと、または敵を徹底的に粛清することを言います。この諺が生まれた中国では今、警察が悪党どもを一網打尽にするどころか、マフィアと結託して、情報を流し、逃がしてしまっています。
出典:宋・魏泰《東軒筆録・巻四》
(※)枢密使:唐・五代・宋の各時代に、軍政や政治上の秘密事項をつかさどった役所の長官。
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