倫理性、安全性問われる「脳埋め込みチップ」の是非(1)

人間の脳にチップを埋め込む臨床試験が進行中

イーロン・マスク氏の推進により、人間のの埋め込みチップが今話題になっています。研究者は、この技術を利用して、麻痺患者が手足の機能を回復できるようになったり、チップを通じてテレパシーで電子機器を操作したり、知能の向上に役立つと考えています。しかし、これは映画「スパイダーマン」のAIと繋がって、自己を失ってしまったドクター・オクトパスを思い起こさせます。

マスク氏の脳移植チップ会社ニューラリンク(Neuralink)はアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受け、人間の脳にチップを移植する臨床試験を実施しました。ニューラリンク社は2021年と2022年にサルの頭にチップを埋め込んで、テレパシーを使ってコンピュータに入力したり、電子ゲームをプレイする様子を映したビデオを公開しました。同社は、動物実験は完了したと述べています。

マスク氏は、ニューラリンク社が開発した脳チップは、失明、麻痺、うつ病、肥満などの疾患の治療に使用できると主張しています。

しかし、同社は、リチウム電池やワイヤーが脳に入るリスクなど、まだ多くの課題に直面しています。また、アメリカ農務省の法執行部門は、動物福祉違反を犯した可能性を捜査しています。理由は、性急な実験でサル、ブタ、ヒツジが手術を受け、異常な数の動物が死亡したためです。

米国ペンシルベニア州立大学の神経倫理学者ローラ・カブレラ氏は、6月初めに「FDAの決定に驚きました。マスク氏は、脳に埋め込まれたデバイスについて、必要な規制や倫理的な問題を考慮しなくてもいいと考えているのでしょうか?」と述べました。

多くの企業が積極的に
人間の脳チップの開発に取り組んでいる

人間の脳チップは非常に高い商業価値と軍事価値を持っているため、いくつかの大手テクノロジー企業は、人間の脳チップまたはブレイン・マシン・インタフェースに関する研究を展開しており、この領域のトップリーダーを目指しています。

現在、人間の脳チップは大まかに3つのタイプに分けられます。第1のタイプは「侵襲型」で、頭蓋骨に穴を開けてチップと電線を埋め込みます。第2のタイプは「非侵襲型」であり、頭に帽子のような装置を被せて頭皮を刺激することで信号を伝えていきます。第3のタイプは「介入型」であり、第1のタイプと第2のタイプの中間的な方法です。

マスク氏の人間の脳チップは第1のタイプに属しており、万が一、手術が失敗すると脳を損傷し、生命を脅かす恐れがあります。第2のタイプは比較的安全ですが、信号が直接脳を刺激することができないため、効果は低いです。第3のタイプは、血管を介してチップを正確に必要な脳の動作部分に送り、脳の監視や電気刺激を行います。

スイス連邦工科大学は「脳・脊髄インターフェース」技術を開発しました。この技術は損傷した神経部分をスキップし、脳と正常な下肢の脊髄神経に電極を接続します。歩くように指示を送ると、12年間麻痺していた男性が、再び立ち上がって歩くことに成功しました。この成果は2023年5月に「ネイチャー」誌で発表されました。

また、アマゾンのCEOであるベゾス氏とマイクロソフトのビル・ゲイツ氏が投資した脳インプラント会社シンクロン社は、BCIセンサーを内蔵したマイクロチップを血管に沿って脳皮質の近くの大静脈に埋め込み、コンピュータの計算や心理的な制御を通じて脳を刺激します。これでユーザーがテレパシーで電子機器をコントロールできるようになります。BCIは脳の信号を外部の技術コマンドに変換するシステムです。

筋萎縮症で両手が動かない患者であるフィリップ・オキーフさんは、シンクロン社が開発したチップを埋め込んだ後、テレパシーでTwitterに投稿できるようになりました。

日本のハイテク企業の社長である徳森翔氏は、2023年6月12日に大紀元に対して、「ブレイン・マシン・インタフェースの開発には、優れたビジョンがあるかもしれませんが、人間の脳の意識と思考は人間の技術で制御できるものではありません。また、大企業が自身の利益のために、倫理基準が低い独裁的な国々で秘密の実験を行う可能性もありますが、それは倫理的な問題や技術的危機に繋がるでしょう」と述べました。

(つづく)
 

吳瑞昌
張鐘元
王佳宜