瓶底に気になる彫銘が…500円で購入した花瓶が実は有名な芸術家の作品だった

ある英国の夫婦が、古物商で、わずか2.5ポンド(約500円)で購入した手のひらサイズの花瓶が、専門家の鑑定で日本の明治時代の著名な陶芸家の作品であることがわかりました。カンタベリー・オークション・ギャラリーが発表しています。

この花瓶のオークション予定価格は、最大で9千ポンド(約163万2千円)に達する可能性も出てきています。

この花瓶は、英国のアーメットとカレンという名前の夫婦が、サリー県の古物商で見つけたもので、高さ約10cmと小さいものです。

カレンは、「アーメットが店内でこの花瓶を見つけ、私に見せてきた際、最初は特に何も引きつけられないものだったけど、彼が花瓶の底にある印(彫銘)を注意深く観察するように言ってくれました」と述べています。

左: 英国でアーマドとカレンが見つけた美しい小さな花瓶、右: 花瓶の底にエッチングされたシール。(カンタベリー オークション ギャラリー提供)

彼女は、夫婦でよく古物商を訪れ、カレンは古書を、アーメットは芸術品やアンティークを探すのが趣味だといいます。

「彼はアンティークの専門家ではないけど、価値のある真正の品物を見つける直感を持っています」

二人は、この印が何か重要な意味を持つかもしれないと考え、その真偽や実際の価値は分からなかったものの、これが何か特別なものであると感じて2.5ポンドで購入しました。

その後、夫婦はカンタベリー・オークション・ギャラリーにこの花瓶の専門的な鑑定を依頼しました。

その結果、ギャラリーは、この花瓶が、並河靖之(Namikawa Yasuyuki)という、日本の七宝工芸の巨匠の作品であると確認しました。

(カンタベリー オークション ギャラリー提供)
 

カレンによれば、この花瓶が並河靖之の作品であると知った際、アーメットは「全身が震えるほど驚いた」と述べています。

カンタベリー・オークション・ギャラリーの共同ディレクターでありオークション専門家のクリオナ・ギブソン氏は、この黒い花瓶には、雄鶏と雌鶏が精巧に描かれ、上部には飛鳥が描かれていると述べており、これらは19世紀の芸術家、並河靖之の作品の特徴であると述べています。

並河靖之(1845年 – 1927年)は、明治時代における最も著名な七宝焼きの職人の一人で、明治帝のもとで製作に勤しみ、複雑な七宝焼きの技術を得意としていました。その作品は生前より芸術界において高い評価を受けており、現在でも多くの美術館に収蔵されています。

クリオナ・ギブソン氏はこの黒い花瓶には、雄鶏と雌鶏が精巧に描かれ、上部には飛鳥が描かれていると述べており、これらは19世紀の芸術家、並河靖之の作品の特徴であると述べています(カンタベリー オークション ギャラリー提供)

日本の伝統的芸術、七宝焼きは、金属を基本素材とし、細やかな金属線を用いて模様を描き、その後、これらの模様を基材に溶接し、色彩を施した上で七宝焼き特有の釉薬を差していきます。そしてさらに精巧に焼き上げ、最後に研磨して光沢を与えます。形状の均整、素材の薄さ、釉薬の滑らかさ、色彩の鮮烈さ、華麗さ、豪華さ、そして模様の優雅さや線の繊細さなど、その魅力は比類のないものがあります。

この珍しい日本の美術品は、7月29日(土)にオンラインオークションに出品される予定です。オークションハウスの評価によれば、この花瓶の落札価格は7千~9千ポンド(約9千~1万1600ドル)となる可能性もあります。

もし今回のオークションが成功すれば、アーメットとカレンの夫妻は、オークションの収益の一部を、彼らが運営する中古品店の慈善団体に寄付する予定だといいます。

 

張雨霏