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漢方薬は肝臓と腎臓を調整してうつ病を治療する
漢方医学によると、腎臓と肝臓は生理的にも病理学的にも密接に関係しており、患者の肝経と腎経を整えることで、うつ病の緩和にも効果があります。
台湾の承恩漢方医院の朱恩立院長は、うつ病患者の肝経の停滞が比較的軽度であれば、肝経絡の滞りを解消するだけでよいと指摘しています。しかし患者が高齢で腎経のエネルギーが弱い場合は、腎臓を温める薬を用いて腎経のエネルギーの循環をよくする必要があります。そうすれば肝経の滞りが整い、うつ状態が改善され、体の不調も和らぎます。
また、重度のうつ病患者は自殺願望を抱くことがあるので、この時は家族が、付き添ったり、おしゃべりをしたり、地域活動に参加するよう促したりして患者を支えましょう。患者の心のケアが非常に重要です。その後、医師は漢方薬で患者の気分の落ち込みを改善し、自殺願望を減らせば、ゆっくりと生きる希望をもつことができます。
うつ病の漢方治療にかかる期間
朱院長によると、うつ病の漢方治療には2~4コースが必要です。1コース約3か月かかるため、ほとんどの中医学治療は約6〜12か月かかりますが、患者の症状が重い場合はもっとかかります。 しかし、患者が積極的に日常生活を整え、社会的なサークルなどに加わることができれば、3か月程度で回復できるでしょう。
自殺傾向のある高校3年生は6か月後に回復した
重度のうつ病を患うある女子高校生の例ですが、彼女は、本当は学校に行きたかったのですが、憂うつで学校に行けず、ほとんど家で過ごしていました。 彼女には自殺願望もあり、自傷行為の兆候もありました。
彼女は、1~2か月の間漢方治療を受けて、睡眠不足、胸のつかえ、動悸、めまい、頭痛、さらには生理痛などの問題が改善されました。 彼女の気分、気力、体力、精神は徐々に改善され、学校に戻り、他の生徒とおしゃべりしたり冗談を言い合ったりするようになり、水泳の授業も受けるようになりました。 5~6か月の治療の後、彼女の精神状態はとても良くなり、真剣に勉強するようになり、最終的には大学に入学することもできました。
重度のうつ病を患っていた定年退職した教師は
もう一つは65歳の定年退職した教師の例です。教師としての仕事を非常に重要視するあまり、次第に大きなプレッシャーを感じるようになり、自律神経失調症や不眠症の症状が現れ、毎晩3~4時間しか眠れなくなりました。
また、家では姑との関係がうまくいかず、夫ともよく喧嘩をし、子供も家を離れていたため、不安感、イライラ、パニックなどに襲われ、うつ状態が悪化し、漢方医からは肝経気滞、肝火 、腎気虚 と診断されました。
●肝経気滞
中医学において肝臓の関連する「気」(エネルギー)が滞る状態を指す。この状態は特に感情の乱れ、例えば怒りやストレス、に関連し、頭痛、不眠、消化不良などの症状を引き起こす可能性がある。
●肝火
「肝火」とは、中医学で肝臓に関連するエネルギー、すなわち「気」が過度に活発である状態を指す。
●腎気虚
中医学において腎臓の機能やエネルギー(気)が弱っている状態を指す。
朱院長は第一段階の治療で、主に肝火を抑える薬物療法を行いました。彼女の胸のつかえ、動悸、睡眠状態が改善し、気分も楽になりました。 第二段階では、肝の経絡の滞りを解消することに主眼を置き、早寝早起き、空腹を避ける、温かいお湯をたくさん飲む、冷たい飲み物を飲まないなど、日常生活の調整を行いました。 そして6~8か月の治療後、彼女のうつ状態は基本的に改善し、その後、医師は腎臓を補う漢方薬を使い、患者の体を丈夫にし、うつ病を改善させました。
うつ病の治療で覚えておくべき3つのヒント
中国医学の専門家によると、うつ病は先天的な身体的問題や後天的な生活習慣の乱れによって引き起こされます。 朱院長は、うつ病の治療は3つの重要ポイントに焦点を当てて始めるべきだと提案しています。
うつ病の治療の3つの重要ポイント
・中医学:肝の経絡の循環を整え、精神的、感情的な幸福を改善する。
・西洋医学によるコントロール:患者の症状がひどい場合は、西洋医学によるコントロールが必要である。
・生活習慣:不健康な生活習慣は気分に悪影響を及ぼす。
うつ病を予防する6つの良い習慣
朱院長はまた、生活の6つの面で良い習慣を身につけるよう提案しています。
1.夜10~11時までに就寝する。
2.規則正しい食事をし、空腹、早食いを避け、食べ過ぎないこと。
3.冷たいものや生ものは食べず、ぬるま湯を飲む。
4.ポジティブなライフサークルに参加する。
5.定期的に運動すること、特に午前中に運動する。
6.瞑想をして心身を健康にする。
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